敵が、多すぎる。
一刻も早く、ここのカービィ型生物兵器に会わねば。
今の私にはただ、その事しか考えられなかった。
「フルエ・・・大丈夫?」
『わ・・・私も・・・ちょっとキツい・・・ですだ・・・』
受けたダメージは、共有する。
私のダメージは震にも、震のダメージは私にも伝わる。
「・・・フルエ、しばらくは休んでなさい」
私らしくも無かった。
普段、私の方がめんどくさがりで、敵がいないときは震にまかせているのに。
・・・元は、この体は震の物なのだから、震が死んでしまえば私も死んでしまう。
だから、今の私は震の身を案じる方を特に優先したのだろう。
「あと、まだ行ってない所は・・・・・・っ」
やばい、目が少し霞んできた。
けれど震が休んでいるのだから、私が何とかしないと。
・・・そう思ってて、いつもの、逆に感じた。
「ここ・・・ねっ・・・!」
細い通路の先に見つけた扉。
それを、私はすぐに開けて中に入った。
この時、私は何も思っていなかった。
そして、後悔する事も知らなかった。
「・・・何よ、ここ・・・」
とてつもなく広い部屋、天井も全く見えない程高い。
そして部屋は暗く、何よりも一番に目についたのは、目の前にある物体。
そう、パラシェイトの言っていた『巨大なツタ』。
そのツタだけでなく、途中に見かけたあの鋭い細いツタも生やしていた、
すなわち・・・・・・『本体』。
「ウソ・・・これって、かなりマズいんじゃ・・・?!」
カービィ型生物兵器ではない以上、相手にするだけ時間の無駄だ。
いや、それ以前にこんな巨大な相手に、今の自分が勝てる訳がない。
そう察した私は、この部屋をすぐに脱出する事を決めた。
だが、
「っっ!?」
いつの間にか扉が、あの細いツタで埋め尽くされていたのだ。
ノブにまで絡み付いており、
鍵穴からは、ウネウネと気味悪く細いツタが顔を出していた。
「こ、これじゃ・・・どうやって出れば・・・!?
・・・ッ、フルエ! フルエ、起きて! ピンチなのよっ!!」
『ん・・・シ、シズク・・・!? こ、これは・・・!?』
震が目を覚まし、今の状況を確かめる。
『これ・・・ま、まさかあの巨大なツタの本体ですだっ!?
シズク・・・!』
「部屋から出ようにも、扉が封鎖されているのよ!
何とか、逃げ切れない!?」
私は震と交代し、その間にこの本体を倒せないかどうか考える事にした。
『くっ・・・こんな巨大だったら、どこに弱点があるか・・・!』
「わ、わわわっ!!」
かろうじて細いツタの猛攻を避けている震だったが、
まだ体力が完全に回復していないせいで、足がよろめいている。
「シ、シ、シズクッ、私、もう限界ですだぁっ!」
必死で避け続けていた震が、ついに足を止めて両手を地面についてしまった。
結局、その間に私はあの本体に対抗する手段も考えつく事が出来なかった。
『フルエッ! しっかり! 動いてっ!』
「シ、シズクゥ・・・ッ!」
震の体は、もう限界だ。
だったら私がやはり、何とかしなくては。
「せめて、抵抗してやるっっ!!」
再び震と交代した私が、本体に銃を何発も打ち続けた。
弱点は分からない。
が、出来るだけ攻撃してくるツタを狙う。
ビシッ!
細いツタの1本を切断した。
だが、それも空しい抵抗である事に変わりはなかったのだった。
〈グゥォォォォオオオオゥゥゥゥ!!!〉
この世の物とは思えない、いや、それ以前に植物とは全く思えない
低い唸り声をあげながら、外の通路に出していたのであろう1本の巨大なツタを、
こちらに向けて伸ばしてきた!
『キャアアアアッッッ!!?』
「!!?」
巨大なツタが私の体を薙ぎ払った。
その圧倒的な衝撃と、壁に叩き付けられたときの衝撃が重なり、
体が砕けそうになる程の激痛が走った。
「・・・・・・っ・・・!」
この一撃で、震から声が全くしなくなった・・・。
私がまだ死んでいないから、気絶したのだろう・・・・・・。
・・・・・・だが・・・、私ももう意識が朦朧としていた・・・。
数十本のツタが、私の体に巻き付いてくる感触がした所で、
私の目の前は、真っ暗になった。
この扉に入ったときから、私達が死ぬのは既に、
決まっていた運命だったのかもしれない。
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