単体とはいえ、少々油断をし過ぎたか。
または、まだ本調子ではなかったのだろうか。
オーガマウスの突進を何度も、私は喰らっていた。
『い、痛い・・・っ』
「くっ・・・、こんな奴相手に・・・!」
突進の際に、オーガマウスはその強力な長い前歯をたてるため、
私の体にはあちこちに傷が付いていた。
『しし、シズク、このままじゃ・・・!』
「まだ・・・、まだ大丈夫・・・!」
そうはいったものの、すでに体力の限界は来ていた。
これ以上喰らえば・・・、恐らくアウトだろう。



〈シギャアッ!!〉



ナイフを振る。



『・・・・・・!』
「・・・・・・がっ・・・」
前歯は、私の体を見事に貫いていた。
・・・痛みが、先程までとは比べ物にならない痛みが、広がる。

『・・・シ・・・・・・シ・・・ズク・・・・・・・・・』
痛みに耐えきれなかったのか、フルエの声が、そこで途切れた。
「フル・・・エ・・・ごめん・・・、いきなり・・・・・・こんな・・・で・・・
敵を甘く見ていたのが裏目に出たのだろう。
自分が、たかがオーガマウスだなんて、思うから。



けれど、もう遅かった。
後悔とは、後から悔やむから後悔なのだ。
それを回避する事なんて出来ない、そんなの、当たり前なのに。



・・・なさ・・・け・・・・・・な・・・・・・・・・
ここで、私の声が切れた・・・・・・。
・・・目の前が暗くなる前に・・・・・・オーガマウスの顔が近づいた・・・・・・。
・・・ああ・・・・・・、こんなやつの・・・エサに・・・・・・、
・・・なる・・・・・・だ・・・なん・・・・・・・・・て・・・・・・・・・・・・。












ガリッ

バリッ

ムシャリ




通路に空しく響くのは、引き千切られる肉の音だけ。






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