これは、プリスが生まれる前の話。
年月にして、約15年前の話である。



北東の国。
おおよそ300年前より、海で頻繁に起こるハリケーンによって沢山の船が巻き込まれ、
ある時は金銀財宝が詰め込まれた商船や貨物船が沈没した結果、
点々と存在する無人島にそれらが漂着した事もある。

現在はハリケーンも落ち着いたらしく、島々に残された宝を探すため、
北東の海では『海賊』達が海を駆け巡っていた。
同業者がはち会えば戦いをしかけたり、何やら話をしたり。
一概に海賊と言っても、全ての者が争い好きというわけでもなかった。






そう、この2人も。

「・・・本当にいいんだね?」
造船業をしているカービィが、
オレンジの結びの紅色の帽子を頭に被っていた、空色のカービィに問いかけていた。
「いいですよ、オレの夢も叶ったって訳ですしっ」
「頑張ろっ、お兄!」
『お兄』と呼ばれた空色のカービィ、『シャニア・ジュエリオ』だ。
つまり、お兄と呼んだ方の青緑色のカービィこそ、彼の妹の『ミゥシー・ジュエリオ』



造船業を営んでいた父と、元格闘家の母。
彼らの両親は、1年前に流行病で倒れてしまった。
この頃、特に大人のカービィの間でかかる重度の悪性ウィルスが蔓延しており、
いつ容態が悪化するか、そのタイミングが全くわからない恐ろしい病気だった。
その間、シャニアが1人でミゥシーの分の世話をしていたのだが、
両親の病気は進む一方で、母親を先に亡くしてしまった。
そして残った父親は、シャニア達に1つのとんでもない案を出したのだ。

「・・・しかし父さんが・・・死に際にオレに、
『子供の頃の夢を叶えたらどうだ?』なんて言った時は・・・、正直、驚きましたよっ」
ちょっと困った顔をしながらも、彼のチャームポイントである笑顔は絶やさない。
「君のお父さんは、彼にしか理解しかねないセンスを持っていたのを覚えているよ。
 ・・・病に苦しんでいても、彼は最後まで『つまらなくない人生』を歩んだんだよ」
「・・・誇り、でしょうかっ?」
「そうだろうなっ」
ふふっ、とお互いが笑う。
その間にミゥシーは、先に出来上がった船の中に入っていたようだ。
「お兄ぃー、船の操縦の仕方も教えてーっ」
「・・・しかし、2人だけだと結構大変なんじゃないかね?」
お世辞にも他の船と比べたらかなり小さめの船ではあるが、それでも2人だけだと広く感じてしまう。
造船業のカービィはそこを悩みにしていた。

「問題ありませんよっ、オレ達はオレ達なりの生き方をしてみせますからっ」
「そうか・・・まったく、君も君だな。
 なんだかんだいっても、彼にそっくりすぎるて困るなっ」
もはや止めてもまず無駄だ、と思いながら船の説明をし始めた。





一通り教えてもらった2人は、ついに出航をし始めた。
「それじゃぁ、船を有り難うございましたっ」
「おじさんっ、さようならーっ!」
「達者でなーっ、シャニア君っ、ミゥシーちゃんっ!」
手を振る造船業のカービィに見送られ、2人は旅立つ。


「・・・よっし、オレ達の人生の第一歩、だな」
「一歩と言うか一進、だねっ」
それもそうかっ、とシャニアは笑って返す。






ジュエリオ海賊団の、結成の日。
それは、同時にシャニアの17歳の誕生日でもあった。




続きを見る

戻る