今日もハバードを拠点として聞き込みを行っているRPG一同。
それにしても、この海上都市・ハバードではどこもかしこもカービィの波。
これだけ多ければ、喧騒も凄いものである。
聞こえる独り言、聞こえない独り言、聞こえる談話、聞こえない談話、声も様々。






「無賃乗車だ! 逃げたぞ!」
ここはハバードの駅。
プリスとメーザがたまたま駅前を通りかかった時、ちょうど駅の方から騒ぎが。
どうやら自動改札機を乗り越えて逃げようとしたカービィがいたらしい。

「逃がしはしませんよっ」
1人の駅員カービィが、何やら自動改札機に近づく。
すると、そこにあった改札機がすぐに巨大なキャノン砲のように変形する。
明らかに、持っている本人の約4倍の大きさはあり、それを片手で持っている。
「ターゲット確認・・・対象は『おとな』、攻撃可能! 発射!」
改札機キャノンから勢いよく切符が飛び出す。
「ぐはっっ!??」
超高速で放たれた切符は空を切り裂き、見事に無賃乗車犯にヒットする。
「全く、こっちは仕事であなた達を運んでいるんですから、逃げちゃダメでしょう?」
駅員の説教は、切符がヒットしてのびている無賃乗車犯には聞こえていないが。
「今日も駅員さん、暴走しているね・・・」
メーザは知らなかったがプリスが言うには、
どうやら昨日も偽札を券売機に投入したカービィが、券売機から出た火炎放射で丸濃げになったとか。
いくら何でも過剰防衛しすぎだろうと、メーザ曰く。






「あれ・・・シャニアさん?」
一方その頃、ウォールはシャニアの姿を見かけた。
何やら大きな病院に入って行ったらしいが、見た所病気でも無さそうである。
ということは、誰かのお見舞いだろうか?
「・・・オレが介入する事でも無さそう、かな?」

ここでウォールがついていかなかったことが幸いしただろう。
シャニアが通っている病室には、彼の船員であるミラスカを愛していた者がいるから。
その者は、ミラスカが事故で亡くなったと聞いた後、ショックで口がきけなくなってしまっていた。
・・・・・・・・・
「・・・具合・・・どう、かな?」
・・・・・・・・・
「・・・ほんとうに、すまない・・・」
・・・・・・・・・
「・・・きっと君は、オレを許してなんか、いないよな・・・」
・・・・・・・・・
「・・・あの時オレが、ミラスカを海賊に誘わなければ、よかったのかな・・・」
・・・・・・・・・
「・・・・・・、じゃあ、ね・・・」
・・・・・・・・・
もしついていったなら、シャニアの過去がウォールにもバレていたかもしれないのである。






「うぉっと!?」
「痛っ! あっ、す、すいませんっ!」
パラドは通りの真ん中で誰かとぶつかった。
そのカービィは茶色の帽子とコートを着用しており、プリスよりも体が一層青かった。
何やら大きなアタッシュケースを持っており、左腕には何やら普通では無さそうな腕時計が。
「ったく・・・気をつけろよ?」
「あ、はいっ、失礼しましたっっ」
何か、慌てた感じでその場を去る青色のカービィ。
「・・・あの顔、新聞で見たような・・・?
 確かこの都市の学会で、時間の勉強をしてたとか・・・」
明日調べてみるか、パラドはそう呟いたのだが。






「ねー、しう、らこ、とぅー、ろん、みー、
 ごま、つじ、えて、りっと、じゅつ、いりー」
「えありす、おーみ、じぇにー、くらいど、のいる、あてな、
 りばーらんす、そりっさ、じりゃす、かりぷ、うくり、ふぃぴしゅー」

大きな公園で一休みしていた亜狼雲が聞いたのは、この世界にも古くから伝わる十二支と十二星座だった。
小さな子供達が覚えるため、特に干支の方は名前が短いのでよく歌になっている。
名前こそ違うものの、順番は全く一緒であるらしい。
「オイラは確か・・・ジュツの年のジリャスだったなりね」
亜狼雲が独り言を呟き、その場を去る。

「ねぇねぇ、なんかひとつわすれてるよー?」
星座の方をあげていた子供カービィが、干支の方をあげていた子供カービィにそう言う。
「え? だってあれって、えとじゃないでしょ?
 ねずみのせいで、なれなかったったんだもん」

そんな話をしていたのは、亜狼雲が立ち去ってしばらくしてからの事だった。






翌日。
今度は亜狼雲以外の5人全員が図書館へと資料を調べに来た。
魔法の事についての本、歴史の偉人の生き様、戦術、道具の種類、魔物の特徴等、様々ある。
当然の事ながら、一般の人達が読む漫画等も置いている訳だが。
「・・・リブラルースの図書館より、本の数は少ないな」
「メ、メーザの言う故郷の図書館って、どんだけ大きいんだよ?」
「いや、ここよりは小さい。
 が、この図書館は外観は大きいのだが、本棚が少ないな」
明らかにこの図書館も、本棚と本棚の間を通るのに苦労する程ぎっしりと棚の列が詰まれてるのだが。
「外側のソファーとか、大きな長机が置けるスペースなんて無い。
 イスがあるとすれば本棚の端っこに小さな丸イスが一個だけで、
 それに棚は天井に着くまであってだな、こんな天井が空いている事なんて無く・・・」

メーザもまた、ウォールがシャニアの事について熱心に語っていたのと同じように語り始める。
本人は普段と違ったウォールを見て呆れていたのに、普段無口な彼女が熱心に語っているなんて、
本末転倒とはこの事か。
「とりあえず話が終わりそうにないから、色々と調べるか」



「古の時代から、なおも生き続けているカービィがいる?」
プリスが調べていたのは、図書館の中にあった最近の新聞であった。
その記事によると、およそ数万年前に生息していたと言われる生物のハーフと思われるカービィが、
近日中にどこかで目撃されていたらしい事。
数万年前は流石にどうかはわからないものの、
少なくとも1000年前からずっと、同じ姿をしたカービィを何度も目撃した例があげられていた。
しかし『そのハーフカービィは「覚えが無い」と言ったため、単なる見間違いかと思われる』と書かれていた。
「しかし取材者はそれぞれ違った波長の声が聞こえたため、
 このカービィについて今後も調べて行きたい方針・・・かぁ」
古から生きているカービィなら、ちょうど今1人いるしなぁ・・・とプリスの感想。
「流石に1000年以上は・・・天使とか悪魔でも無い限り無理・・・かな」
生物図鑑でも見て調べようと一瞬思ったプリスであったが、内容が曖昧なためやめる事にした。



「おかしいな・・・この空欄に、誰がいたのか思い出せないなんて・・・」
パラドはさっきから頭を抱えながら、学会の資料が記載されていた本を見ていた。
そこに、明らか不自然に空欄が空いていたのだ。
上下左右にはちゃんと顔写真があるのに、ただ1つある空欄。
まるでその世界から完全に消え失せて、記憶を抜かれたような、そんな感じである。
「あ〜〜〜、くそっ! 思い出せねぇ!!」
「何に悩んでいるのかは知らないが・・・ここは図書館だ、静かにしろ・・・」
メーザが少し怒ったような声でパラドに注意する。
確かに他に読書をしていた者達の目線が、さっきからパラドに集中している。



「この大陸には3つの大きな植物界があるのか」
ウォールは、今自分達がいる大陸について調べていた。
その中で注目されたのが、前日自分達が通って来た妖精の森と、
赤暁月の村の桜の木を含む3つの植物界についての事だった。
「桜の木、キノコの森、妖精の住処は、ユグドラシルの管理下にあるとの噂??」
ユグドラシルとは確か、北欧神話にある伝説の世界樹の事であるはず。
「おいおい・・・これ、現実と神話をごっちゃにしてるからアテにならないな・・・」
続きには、『ユグドラシルの衰退と共に植物界も荒れ果て始める』と書かれていたが。



「昔の神話の話って、結構のめり込めるもんだな」
ゼネルが読んでいたのは神話の本であった。
天界と魔界で戦争があった事、東洋の付喪神や北欧の妖霊達の事から、
龍達の祭の情景や南国の神の事が詳しく書かれていた。
ただ、1つだけ架空と記されていた神話は、内容が省略されていた。
「悪魔っぽいやつならいたけどな・・・エーボウトだっけ。
 ま、本物の悪魔なんて存在しないだろうけど」
そう言いながら、半分飛ばし読みでゼネルは神話の本を読み続けていった。






図書館で調べものをいくつかした後、夜の宿にて。
「・・・ここかな?」
「さっき宿に入っていった姿が見えたからね」

コンコン、とRPG一同が泊まっていた部屋の扉にノックが。
「ん? 誰だ?」
えっと、この部屋に僧侶のカービィ君、いますか?
僧侶のカービィ、といえば恐らくプリスの事だろう。
「その声・・・あの、ひょっとして一昨日の水色のカービィ・・・さん?」
「プリス、知ってる人なのか?」
「あ、うん、屋上から落ちてきた所を何とか助けたんだ・・・って、その事言うの忘れてたね」
とりあえず知ってる人なら問題無いだろう。
プリスは部屋の扉を開ける。
「今開けるよっ」






そこに、確かに水色の体をしたカービィがいた。
だが、妖精の森でリキュアから聞いた『ネコの耳と尻尾を付けた子』、
そしてそのカービィについて行った『妖精カービィ』が、すぐ隣に。



間違いなくそこにいたのは、彼らが探していた『リフォン』と『アドレス』。



「!!?」
もちろん6人とも全員が驚く。
助けた本人であるプリスだって例外ではなかった。
何故なら助けた時、耳も尻尾も無かったし、そばに妖精カービィなんていなかったからである。
「え、あ、あの・・・??」
もちろんリフォン本人には、そんな事情を知っているはずも無く。
「プ、プリス・・・・・・」
「だ、だ、だってっ、あの時耳も尻尾も付いてなかったよ!?
 まさかこの人達が本人だったなんて・・・!」
「本人? ・・・あなた達まさか組織の差し金!?」
アドレスが急に警戒態勢を取る。
その行動に、メーザが何やら違和感を感じた。

「・・・? H・Pを敵対している?」
リキュアから聞いた情報では、今のご時世では珍しい『パソコン』を使っているとの事。
ということは、このリフォンとアドレスはH・Pである確率が極めて高かったのだが、
どうやら完全に逆であるらしい。
「えっと、あのっ・・・君達は・・・H・Pを知っているの・・・かな?」
プリスが戸惑いながらも2人に質問する。
「H・P・・・あんな組織二度とゴメンだわ!
 ・・・で、あなた達は何なの? H・Pとはどういう関係?」
さっきからずっと警戒態勢のアドレスに対し、プリス達は落ち着いて自分達の事情を説明した。



「・・・なるほど、って事はあなた達も被害者なのね」
アドレスは、プリス達がH・Pに敵対していると理解した事で警戒態勢を解いた。
「何て可哀想な設定! お姉さんを取り戻す為にこんな可愛い子が苦労するだなんてっ!」
ものすごいスピードで、リフォンがプリスに突然抱きつく。
もちろん急な事にひるんだプリスは逃げる事も出来ず、そのまま抱きつかれるハメに。
「あー、えっと・・・それで『あんな組織二度とゴメン』・・・って事は?」
「何年か入っていたのよっ、けれどあんな恐ろしい事ばかりする所だったなんて、わからなかったもん」
プリスを抱きしめたままの状態でリフォンが説明する。
ちなみにプリスの方は何だか苦しそうな状態になったため、アドレスが注意してリフォンに離すよう言った。

「よぉしっ! プリス君よねっ!? 私達もあなたの力になるっ!」
「ちょっ、リフォン!?」
リフォンのいきなりの爆弾発言に、アドレスがついていけてなかった。
「プリス君に助けられたんだし、お礼として返すならこれくらいしなくっちゃ! ねっ!?」
「・・・ち、力になってくれるのなら嬉しいけど・・・さ?」
「・・・何だかキャピキャピとしたやつが仲間になったな、オイ・・・・・・」
ほぼ1人の突っ走った行動によって、リフォンがRPGに手を貸す事となった。
アドレスはリフォンのそばに常にいるため、半分仕方なく協力という形となってしまったが。






そして2時間後、H・Pのアジト本部では。
「そうか・・・ハバードにいるのか・・・」
「あそこは確か沖合に中間拠点地を作ったよなぁ、海のカービィどもを追い払ってさ」
宿に向かおうとしていたリフォンとアドレスを、空から見つけたビーツェスがトップに報告していた。
「あの拠点地は色々と思い出があるよな・・・『楽しい』、思い出がなっ」
トップが笑う。
その隣にいたノベルは、表情を全く変えず。
「弟も大分頑張るもんだ、な? ノベル・・・おっと、今はお前に弟はいないんだっけか」
・・・・・・わたし・・・は・・・ひとり・・・・・・。
 ・・・トップに・・・あうまで・・・・・・ずっと・・・・・・




「さぁてRPG・・・今度は潰してやるぜっ・・・」
ハバードにいるRPG一行に、魔の手が忍び寄る。








〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜
「ちょうどこの沖の海底に、あいつらの拠点地の1つがあるわ」
「あの弟と、裏切り者の姿が見あたらないな・・・まぁいいか」
「オレもついていくよっ、3人ともっ」
「そういえばボクらの仲間、今どこにいるのかなっひゃ・・・」



〜TO BE CONTINUE......〜




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