海上都市・ハバードのビル群を見つけ、橋を渡ろうとしていたRPG達。
どうやらこの都市に行くのに、ポップスターでも珍しい『鉄道』が走っているらしい。
その昔、バタービルディングやププビレッジの近くにも『プププレールウェイ』という鉄道が通っていたらしく、
その時使われていた車両が今も尚走り続けていた。


「流石都市・・・鉄道なんて初めて見たよ」
「これが『電車』というものなりか〜」
「便利と言えば便利だなっ、オレ達の村の近くにも通ってくれねーかな?」
「・・・村・・・復興してからね?」
ウォールはすぐに口を塞ぐ。
プリスはすぐ理解していたからか、ウォールに心配かけさせまいと作り笑顔を見せていた。
・・・当然もう片方隣のメーザから怖い顔で睨みつけられていたが。



『海上都市・ハバードに到着ですー、ご利用有り難うございましたー』



電車のアナウンスから、車掌の声が。
6人は駅を降りる準備をし、電車の扉が開くとともに駆け下りる。
「うわあぁぁ〜〜・・・・・・」
見上げる程に高いビル群、建物が多すぎて、前を見ているだけの視点では青空も見えない程の密集率。
なんといっても、歩いている人の数が今までの町とは比べ物にならない程であった。
「こりゃはぐれたら大変だな、とりあえず宿まで集団行動だっ」
「オッケーッ!」









翌朝。
「これだけ大きい都市だと、しばらくはここを拠点とするしかないな」
「ってことは、冒険はしばらく休みかぁ・・・」
「とりあえず情報収集と物資補給、ここの留守番役を決めておくか」
相談やくじ引き等の結果、パラドが留守番をすることになった。
「今日は外出不可かよ・・・トホホ
「そう言うなって、明日はオレなんだからさっ」
残りの5人は、亜狼雲、ゼネル、ウォールとメーザ、プリスで別行動をすることになった。






『亜狼雲の場合』
「森の中は矢じりも全てそこらの石で即席してたなりから・・・武器屋にでも寄るなりっ」
宿屋の店主に武器屋の場所を教えてもらった亜狼雲。
その武器屋は都市の外側、港の近くにあるらしい。
「『ハバード』・・・なるほど、『港』なりねっ」
一人納得してくすっと笑いながら歩いているうちに、武器屋に到着した。

【ガーディハンド】 打撃攻撃力+10 命中率+4
【麻痺毒液】 亜狼雲専用、次のターンの矢の通常攻撃に、麻痺の追加効果を付加する

「さぁて、次はどこへ行こうなりか・・・」
「・・・ひゃ・・・」
? 今一瞬何かの声が。
耳の異常発達していた亜狼雲に、かすかに苦しそうな声が聞こえた。
声の聞こえた方へと走るその先は、港の端からいける砂浜であった。
「都市とはいえ海上だからか、砂浜もあったなりか〜」
「・・・たすけてっひゃぁ〜・・・」
「っ、やっぱり声がするなりっ」

砂浜を走り、声の元を探していると何やら変な物体が打ち上げられていた。
「うわわっ、ひ、干涸びているなり!?」
その物体はクラゲのような特徴を持ったカービィであったが、浜に打ち上げられたせいで
体が干涸びてぺたんとなっていた。
「ぁ〜・・・た、た、たすけてっひゃ〜・・・み、ず、を〜・・・」
「水って、海水の事なり!?」
「と、とにかく〜・・・なげこんでほしいっひゃ〜・・・」
すぐに亜狼雲はクラゲのカービィを海へと放り投げる。
ぱちゃんっ、というとても軽い音をしてしばらく水面に浮いていたが、
その後海の中へと沈んでいった。
「ちょ、だ、大丈夫なりっ!?」
・・・・・・・・・
沈んだ所からはブクブクという泡の音しか返って来なかった。
投げ込んでほしいと言われたからその通りにしたのだが、果たしてそれでよかったのだろうか?
心配していた亜狼雲であったが、泡の出ていた場所から勢いよくさっきのクラゲカービィが飛び出した!
「っひゃー! 水っひゃ、水っひゃ〜っ、あひゃひゃひゃひゃ!!」
・・・何だか沈む前よりも大分テンションがアップしていた。
「さ、最高にハイになってしまったなりか?」
「いやいやありがとう、助かったっひゃ〜」
「ど、どういたしてましてなり・・・」
何だかいまいちこのテンションに乗れない亜狼雲。
笑い方に多少危険臭がしたのかもしれない・・・。

「君は命の恩人っひゃ〜、見つけてくれなかったらボクはあのままミイラになってたっひゃ〜」
「すでにあの時ミイラになってなかったなり?」
確かにクラゲカービィは先ほどまで干涸びていたはずだが。
「そこは気にしちゃダメっひゃ。
 あ、そうそう、ボクの名前はゼルフィっひゃ、君の名前は?」
「オイラの名前は、亜狼雲なり」






『ゼネルの場合』
「亜狼雲は武器屋に行くっていってたな・・・別行動なのに行く所一緒とは、ははっ」
ゼネルにとってはおかしな事だと思ったのだろうか、少し吹き出してしまったらしい。
「・・・それはいーんだけど、どっち行きゃよかったんだっけ?」
何というお約束、何というお決まりパターン、片方が迷わずに行けばもう片方は迷うとは。
ゼネルは亜狼雲とは違う道を通って港に出ようとしていた。
「何だかこの辺りは日の当たりが悪いなー、ビルばっかってのもいいことばかりじゃないんだな」
「・・・・・・!」
建物の間を彷徨い歩いていたゼネルが、誰かの声を聞き取った。
先ほどの話で亜狼雲が聞いたゼルフィの声とは違うようだが。
「何か騒ぎか? 争うような声が聞こえてるな・・・」
とりあえずヒマでもあったゼネルは、何が起きてるのか知りたく声のした方へと向かう。

「こいつめ、やっちまえー!」
「このゴキブリめー!」
「きたねーんだよ、おめー!」


「・・・っ!」
そこには、ゴキブリのような特徴を持ったカービィが3人程のカービィ達に虐められていた。
殴られたり蹴られたり、叩かれたりしていたゴキブリのカービィは、抵抗出来ず頭をガードして丸まっている。
「おいおい何してんだお前ら」
半分呆れ、半分虐められていたゴキブリカービィが可哀想に思えたゼネルが止めに入る。
「うるせーな、お前には関係ねーだろっ」
「失せろよ、気が散るだろーがっ!」

やれやれ。
そう思ったゼネルが右手を天にかざす。
(ハンマーで衝撃でも出して驚かすかっと)
ゼネルは単にそう考えていただけであったため、すでに動作は振り下ろしも開始されていた。
天にかざした右手から出てきたのはハンマー、そのはずであった。
ところが、


(!?)


いつの間にかゼネルのヘルメットの形が大きく変わっており、足模様も靴のような形となっていた。
左手には爪が生えており、さらに右手にはハンマーではなく、愛用のソードが。
「な・・・え、ちょ・・・」
対する虐めていたカービィ達が、そのソードを見てゾッとした。
ゼネルの右手は振り下ろされていた後であったため、地面に叩き付けられたソードからは強力な衝撃波が。






ズバンッッ!!!!






衝撃波は3人のカービィとゴキブリカービィに当たらなかったものの、
後ろにあった廃ビルの壁をいとも簡単に切り裂いた。
切り裂かれた壁から走った亀裂を見ても、その威力は火を見るより明らかであった。
「・・・あ、あわわわわ・・・・・・」
「こ、殺されるーっっ!!

勘違いをしてしまった3人のカービィはすぐにその場を逃げ出した。
「あ、お、おい! ・・・やべー、何でこんな姿になっちまったんだ・・・?」
どうやらゼネルもまた、『トラスフォルム』が使えるようになったらしい。
・・・タイミングはある意味でも最悪であったが。
「・・・・・・」
ぽかん と口を開けていたのは、ゴキブリカービィであった。
とりあえずトラスフォルムの力を解除したゼネルが振り向き、声をかける。
「えーと、その・・・大丈夫か? さっきの衝撃波、当たってなかったか?」
「お・・・う・・・さま?」

「は?」
何だか不思議な発言をしたゴキブリカービィに、今度はゼネルがぽかんとする。
「あ、そ、その、大丈夫っち! ありがとうっち!」
すぐに元の頭の回転を戻したらしく、必死でお礼を言うゴキブリカービィ。
「いいってことよ、あんなとこ見たら放っておく訳にもいかねーからさっ」
頭を撫でるゼネルに、ゴキブリカービィがほっとした表情を見せる。
「あ、ボ、ボクの名前、チロッコって言うっち!」
「オレは、ゼネル・スターヤードッ。
 チロッコ・・・あんなに虐められて、ほんとに大丈夫なのか?」
「ボクは今も平気で生き続けているっちっ、だから大丈夫っち!」
「・・・ふーん?」






『ウォールとメーザの場合』
「・・・食料調達は済んだな・・・」
「武器屋には亜狼雲とゼネルが行くそうだし、オレ達はその後でもいいな」
カップル・・・には見えない訳でもないだろうし見えるかどうかは分からないが、
ウォールとメーザは2人組で行動していた。
「・・・では・・・どうする? パラド1人では彼も寂しいのでは?」
「宿に戻るってことか? それにしてはあまりにも早いだろ」
まだこの都市をうろつき、雑貨屋に寄り、調達に悩んだにも関わらず、まだ1時間も経っていなかった。
「お」
ウォールが何やら見つけた。
・・・喫茶店らしい。
「流石都市と言うべきか・・・結構・・・、いい感じっぽい喫茶店だな・・・」
「・・・時間はあるし、寄るか?」
ウォールの問いに、メーザがこくんとうなずく。
・・・やっぱりデート中のカップルに見えない訳でも以下同文。


カランコロン、という喫茶店でも有名な小さな鐘の音がなる。
「いらっしゃいませ」
喫茶店のマスターに席をすすめられ、2人はカウンター席へと向かう。
「これは中々雰囲気のいい喫茶店だっ」
「ははっ、君達・・・何か旅でもしているのかい?」
「・・・ええ、一応」
マスターが嬉しそうな感じでウォール達と話をする。
「へぇ、旅かぁ・・・海にいた頃が懐かしいねっ」
突然、ウォールの隣にいた空色のカービィが話しかけてきた。
そのカービィは左腕と右目に大きな傷を負っており、オレンジの結びの紅色の帽子を頭に被っていた。
「あなたは?」
「オレ? オレは、シャニア」

その名前を聞いて、ウォールの表情がすぐに驚きの表情へと変わった。
あなたまさか・・・本物の、シャニアさんっ!?
「・・・ウォ、ウォール・・・?」
隣にいたメーザが珍しく驚いた表情を見せていた。
何せそれ以上に珍しいウォールのリアクションを見たからである。
「ありゃ? オレ、キミと会った事・・・あったっけっ??」
「あ、いえ・・・で、ですが、シャニアさんって・・・あの『ジュエリオ海賊団』の・・・」
「あぁ、なーるるるっ、オレそのテの方で有名なんだねっ。
 そのとーり、オレが『ジュエリオ海賊団船長:シャニア・ジュエリオ』だよっ」
それを聞いたウォールがとても嬉しそうな表情を見せる。
絶対に普段は見れないであろう、キラキラと目を輝かせるウォール。
「うわぁ、うわぁ! オ、オレ、シャニアさんの大ファンなんですよ!」
「・・・なん・・・だと・・・」
メーザがもはや今のウォールに付いて行けてない。
彼女から見れば、船長と言った彼はどこからどう見ても子供じみた顔、女性のような顔つき、
威厳があるとは思えなさそうなおとぼけフレンドリーな表情をしていたのだ。
「あっはっは、何だかそう言われるとオレでも照れてしまうなぁ・・・」
「・・・あのー、シャニアさん? ・・・ご注文のチョココロネ・・・」
「あ、そうだったぁー、はっはっはっはっ
シャニアの笑いに、ウォールもつられて笑う。
1人このテンションについて行けてなかったメーザは、すでにウォール達から目線をそらしていた。
(ウォールのイメージが崩れていっている・・・こ、これが噂の『カリスマブレイク』か・・・?)






『プリスの場合』
「情報収集で都市のあらゆる場所は覚えたけど・・・、H・Pにも気をつけなくっちゃ」
今は1人で歩いているプリス。
こんなにも大きな都市なのだから、きっとH・Pの連中がいる可能性だってあるのだ。
「そうだ、リキュアさんの言ってた『リフォン』と『アドレス』って人らを見つけないと・・・」


「あーあ・・・今日も何だかヒマねぇ」
「アンタねー、こうやって平和な毎日を『ヒマ』の一言ですましちゃダメじゃないのっ」
一方こちらはハバードのとあるマンション。
紫色のネコ耳と尻尾のつくりものを付けた水色のカービィと、
紫色の妖精カービィが、マンションの屋上で話をしていた。
「でも毎日が毎日おんなじような感じじゃ飽きても仕方が無いと思わないー?
 行くとこも同じ、見た風景も同じ、使う物も話題もほとんど同じでさぁ」
はぁ とため息をついたネコのようなカービィが柵にもたれかかる。



ミシ・・・バキッ



「・・・えっっ・・・?」
柵がどうやら錆び付いていたらしく、もたれかけようとしていた場所が突然壊れた。
その勢いに耐えきれず、もたれかかるどころか足を踏み外す。
「リ・・・・・・!!」



「っ!?」
何かの叫び声を聞いたプリスが上を見上げると、そこには今にも落下しそうになっていた水色のカービィが。
どうやら、いきなりの落下でネコ耳と尻尾は外れてしまったらしい。
「きゃ、ああああああああっっっ!!!!」
妖精のカービィが水色のカービィを必死で引っ張り上げていたが、体の大きさがあまりにも違いすぎるため、
スピードを落とす事も出来ていなかった。
「あのままじゃ危ない! 『クイッカー』!」
プリスはすぐに自分自身にクイッカーの呪文を唱える。
速度を高めたプリスが必死になって走り、向かう。
「ま、に、あええええええっっ!!!」






「いたたたたた・・・・・・あ、あれ?」
水色のカービィは無傷であった。
しかしその下には、プリスがクッションとなって潰れていた。
「きゅ〜・・・・・・き、君、大丈夫っ? ケガはない?」
「え、え? そ、それは私のセリフだと思うんだけど・・・・・・」
プリスはクイッカーの呪文と同時にあらかじめ『ジヒール』の呪文も唱えていたため、
自動回復によってすぐにプリスのケガは消えた。
「よかったっ、その様子だと大丈夫みたいだねっ。
 ・・・でも念のため、『ヒール』ッ」
プリスは水色のカービィにヒールの呪文をかける。
「あ、ありがとう・・・」
「どういたしましてっ・・・ちょっと宿に戻って今日聞いた情報をメモしなくっちゃっ、それじゃぁっ!」
「あ・・・」
プリスはその場を立ち去る。
水色のカービィが引き止めようとしたが、結局出来なかった。



「リ、リフォン、ケガは?」
妖精のカービィが水色のカービィ、プリス達の探していた『リフォン』を心配する。
どうやら落下途中の強い衝撃風で、ネコ耳や尻尾と同じく飛ばされていたらしい。
アドレスからネコ耳と尻尾を返してもらい、付け直しながら説明をする。
「あ、大丈夫よアドレス・・・さっきの子が・・・・・・」
「? どうしたのよ、顔、真っ赤よ?」
妖精のカービィ『アドレス』が、リフォンをじーっと見ていた。

そう、この2人が、『リフォン』と『アドレス』なのであった。







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜
「っ、ミゥシー!!?」
「マスター・・・あの子達の分も、先に払っておくよ」
「ジュエリオ海賊団は、簡単にくたばったりしないさっ」
「絶対に送り帰すって・・・・・・約束・・・したのに・・・」



〜TO BE CONTINUE......〜




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