弓使い兼商人見習いの『亜狼雲』を仲間にして、早3日。
海上都市・ハバードへと向かう途中、RPGは森の中を






「案の定迷ってます!!」
「しかも一々魔物が出るから鬱陶しい!」
「・・・さっきから私達は誰に喋っている!?」
「知らないなりっ!!」

何と言うお約束。
その森はあまりにも広く、木が鬱蒼と生い茂っていたため迷っていたのだ。
ちなみに特に周りには誰も聞いてくれるような人がいないというのに、
一行はそれぞれ1人ずつ独り言を言い合っていた。






「くそー・・・予定じゃ昨日の昼頃には着いていてもいいのに」
「オレ海上都市っての一度見てみたいんだよなぁ・・・」
「それにはこの森を抜けなきゃ行けないって言うのも酷だね・・・」
地図によると、この森には妖精が住んでいるとか何とか。
しかしさっきから妖精はおろか旅人等に会う事も無く、
出て来るのは全て暴走した魔物達であった。


「・・・そういやさ、プリス」
休憩していたウォールが、プリスに問いかける。
「お前が前にナイトグライダーと戦った時の・・・ほら、あの変身したやつ。
『トラスフォルム』っていつでも使えるのかな?」
そういえばここ最近、プリスが変身した事は一度も無かった。
ゼネルがあのとき言った事では、
『感情や気持ちを具現化して姿を変え、一時的に能力を劇的に高める特殊な能力』
とは言っていたが。

「何とかそれがいつでも自由に使えたら、こういうとき楽なんだろうけど」
「それに・・・その能力はプリスにしか使えないのか? ゼネル」
メーザが1つの疑問を言う。
過去、プリス以外にトラスフォルムが使えたのは、伝説のカービィのスイレンだけであった。
が、先ほどの条件にはさらに、『一部のカービィ族』も含まれていた。
この能力が果たして、スターヤード一族のみに限定されているのか、
またはウォール達のような普通のカービィ達でも使えるのか。


「んー・・・それはなってみなきゃわからねーや」
「なんだそりゃ」
「オイラ達も使えたら、心強いのになりぃ・・・」
結局分からずじまいで終わり、別の話へと切り替える。
・・・だが、ただ1人休憩せずに修行をしながら話を聞いていたパラドは、
トラスフォルムが使えるよう努力をしていた。


(感情や気持ちを具現化・・・オレならどんな気持ちを持っている・・・)


マフィトゥの村で修行をして、弟子達を見返してやろうと旅に出たパラド。
RPGに挑戦を受け、プリスに負けた時は悔しかった。
ナイトグライダーに深手を負わされ、戦闘不能になってしまった時も。
赤暁月の村で京蘭に襲われた時も、結局ダメージを与える事も出来ず。


(プリスだってあん時、ナイトグライダーと戦ってる時に『負けない』って思ったから、
 トラスフォルムが使えたんだっ。
 ・・・オレだってよ・・・・・・オレだって・・・)


修行の最後にいつも行う、瞬触流のストンピングである流星蹴り。
その足に力を集中しながら、パラドは1つの思いを込めた。


(オレだってプリスに、負けてられっかよっ!!!)






ドゴォッ!!!



「!!?」
「うぉお、なりっ!?」
「な、な、何!!?」
「後ろには確か・・・パラド!?」
「どうしたんだ、オイ!」
休憩していたのは5人、ということは残っているのはパラドだけであるから、
彼に何かあったとしか考えられない。
先ほどの爆音は、かなり大きいものであった。
すぐに5人が、爆発のした場所へと駆けつける。


「・・・・・・」


そこには、

「・・・これが、つまりそうなのか?」
体と足、目の色は、間違いなくパラドであった。
しかし、頭に巻いていたはずの金属質のハチマキの形が異様に変わっており、
今まで装備していなかったはずの篭手、足に新たに追加された模様と、
そしてつま先には鋭く尖った爪が生えていた。


「・・・パラド、その姿って・・・」
「トラスフォルムじゃね? それ以外に何かあるか?」
「・・・パラドが使えたって事は、やっぱりオレ達もなのか?」
プリスやスイレンのように、スターヤード一族しか使えない訳ではない事は判明した。
「で・・・何でトラスフォルムが使えたの?」
「前にゼネルの話したとーりさ。
 オレは、『絶対に誰にも負けたく無い』って気持ちを集中させたんだ」
つまり気持ちをそのまま具現化させたわけである。
「しかしよー・・・おんなじトラスフォルムじゃ何かしっくりこねーよな」
「? どういうこと?」
「もしお前達もトラスフォルムが使えたらごっちゃになるだろ?
 だから、個々のトラスフォルムに名前付けてみようかなーって」
なんだそりゃ、とウォールとゼネルがツッコむ。
とりあえずパラドは、自分のトラスフォルムに『アクティブビースト』という名前をつけたらしい。
「プリスは名前つけねーのか?」
「ん・・・ボク、ネーミングセンスって無さそうだからさ・・・」
「けど、もし付けるとしたら?」
そう言われたプリスは必死で考え始める。
といっても、わずか1分でどうやら名前は決まったようだ。
「・・・『エンジェルシアン』
トラスフォルムの時の杖に付いた天使の羽飾りからエンジェル、
自身の体の色のシアンをくっ付けた結果である。
「いいじゃん、プリスに似合う名前だぜっ」
「可愛い感じの名前で一層ぴったりなりっ!」
どうやら、ゼネルと亜狼雲も気に入ったようだ。
プリスは気に入られて嬉しかったらしく、顔が少し赤くなっていた。




「あぁビックリしたっ、さっきの爆音は何だったのかしら?」
トラスフォルムの事で話をしていたRPG達の前に、1人のカービィがあらわれる。
武器も持っておらず腕っぷしも良くは見えず、見た所旅人では無さそうである。
「え? あの、あなたは?」
「妖精の森の植物で薬を作ってる、『リキュア・チューヒール』よっ。
 本来はこの森は『エレミナ』ちゃんの管轄下なんだけど、彼女が忙しいから私が見に来た訳」
「あ、そうか・・・さっきのパラドの飛び蹴りが」
見事にクレーターが出来てしまっており、その周りには先ほどまで生えていた植物の姿は無い。
かなりの破壊力を持っていた事が分かる。
「見た所君達、何かの旅をしているようだけど?」
「あ、実は・・・・・・」


プリス達はいつものように、旅の目的について話す。
それともう1つ、海上都市へと目指す途中でこの森に迷ってしまった事も含めて。
「そう言う事なの・・・けれど君達、風邪薬とかそういうのは持っていないの?」
「・・・あ」
回復呪文の使えるプリスがいたから忘れていたが、肝心な事が1つあったのだ。
「もう・・・病気は回復呪文じゃ消えない、これは常識でしょっ。
 あくまで回復呪文は外傷を回復するもの、病原菌という生命体は殺せないのよ?」
「う、それは確かに言えてる・・・」
病気は元々病原菌の生み出す毒が原因で発症するもの。
回復呪文はその毒を消す事が出来ても、元である病原菌自体を消す事は出来ない。
結果的には、その都度発症した毒を回復するイタチごっこで終わってしまうのだ。

「仕方が無い子達ねぇ、私の薬屋に寄ってらっしゃいっ。
 この森を抜ける道も教えてあげるからっ」
流石に3日間も森に迷ってまいっていたRPG達は、リキュアのあとをついていくことにした。








「妖精の森って言うけど、あんまり妖精に出会わねーもんなんだな」
リキュアの店兼一軒家で休んでいた中、ゼネルがそう呟いた。
「この森には『植物』属性の妖精が住んでいるの。
 けど妖精達は普通私達の前にはあらわれないわ。
 エレミナちゃんがいれば、今すぐでも見られるのだけれど・・・」
先ほども彼女が名乗った『エレミナ』というカービィは、どうやらこの森の植物を管理しているらしい。
それ故に普段は忙しく、リキュア以外の人物には妖精と同じ位滅多に会わないようだ。
「妖精かぁ・・・旅のサポートとして1人はついてきてくれたら、心強いんだけど・・・」
プリスのその言葉に、リキュアが何か思い出した。
「そうそう、何かネコの耳と尻尾を付けた子について行ったのよ、1人だけ。
 声がどうとか言っていたけれど・・・・・・」
「ついていった? そのネコのような子の住んでいる所とか、知ってますか?」
「知っているわよ。
 彼女、君達が行こうとしてるハバードの出身らしくてね、
 よく『パソコン』って機械を使っているらしいのよ」


パソコン という単語にRPG全員が反応する。
この時代に個人でパソコンを使う者はそうそういない。
何故なら、自然を取り戻す政策によってほとんどの機械類は破棄されたはずだからである。
使う者と言えば、商業目的か、またはよほどの情報収集狂か。
まさか、彼女はH・Pに関係しているのではないか?
一同の脳裏によぎった、共通した1つの考え。
「・・・敵ならば、情報をつかめるチャンス」
「敵でなければ、味方として2人増えるかも?」

全員が考えている最中、リキュアが話に割り込んできた。
「考えている所申し訳ないけど、病気に効く薬が出来たわよっ」
「あ、どうもです・・・。
 あと、その子は何か・・・名前とか言ってませんでしたか?
 ついて行った妖精の名前も・・・」
何とかここで情報を入手出来れば、ハバードで探索がしやすくなる。
「えっと、ここによく来る子の名前が『リフォン』ちゃんで、
 ついていった妖精の名前は『アドレス』ちゃんだったわ」
『リフォン』、そして『アドレス』。
この2人は、敵として対立する立場か、それとも味方になってくれるのか。






道を教えてもらったRPGの、3日目の夕刻。
すでに太陽が沈みかけ、星空が見えてきた時であった。
「見えてきたぜっ、あの大きなビル群・・・間違いない!」
森を抜け出た先に見えた、高くそびえ立つ建物が広がる、橋の先の、『海上都市』。

「ハバード、到着だっっ!!!」
RPG達は長い橋を渡り始めて、ハバードへと向かう。







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜
「いやいやありがとう、助かったっひゃ〜」
「ボクは今も平気で生き続けているっちっ」
「あなたまさか・・・本物の、シャニアさんっ!?」
「き、君、大丈夫っ? ケガはない?」



〜TO BE CONTINUE......〜




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