村から大分走った5人は、京蘭の影が見えなくなった所で草原に横たわっていた。
「な、なんだったんだ一体・・・」
「意味ありげなようで、結局何の情報も無かったな・・・・・・」
「だが、H・Pが村を破壊したまま放置していたのは、
 あの者がいたからだろうな・・・・・・」
メーザの推理は間違っている。
村を破壊したままで、中間拠点地を建てずにいる原因は別にあるのだから。


「・・・・・・」
プリスだけが、どうしてもまださっきの状況を思い出していた。
何故、回復呪文や治療呪文が効かなかったのだろうか。
一体、何に苦しんでいたのか。
パラドが触れた際に気付いた、異常な程冷たい体。
片言な発言からかすかに聞き取れた、『ミチヅレ』『ネタマシイ』。

.........『道連れ』? 『妬ましい』?


思い当たる節が1つだけあったのだが、憶測であったがためにすぐに考えを止めた。
「・・・ん?」
ウォールが起き上がったと同時に、何かを見つけたらしい。
「? 何を見つけたの?」
「あれ・・・建物っぽいのがいくつか建ってないか?」
指を指したその方向を見てみると、赤暁月とはまた違ったつくりの建物がいくつか建っていた。
「町!?」
「かもなっ」
全力疾走の後で疲れていたのだが、町があるとなれば話は別だった。



「・・・『陶芸の町・セラミーク』・・・」
「地図には載ってないんだけど・・・まぁこの地図、古いもんね」
プリス達の持ってた地図は、大体4、5年前から愛用していた地図だったので、
最近出来た町等は記載されていない。
一通り、この町について情報を聞き回った。
「ああ、この町かい? 4年前にすぐそこの・・・赤暁月って村だっけね?
 何やら謎の集団に破壊されたせいで行き場を失った住人達が、その集団にバレないように
 こっそりと町を建設していたのさ。
 何かその集団、村の跡に基地みたいなのを作ろうとしていたようなんだけど、結局野ざらしのまんまだよ」
つまりセラミークの町は、赤暁月の村を改良化したようなものだ。
そういえば一部の家の壁だけは、先ほどの村のガレキと色等がよく似ていた。

町の大まかな場所等を知った5人は、夜になったため宿に泊まることになった。




翌朝、RPGは道具の調達や情報集めに早速取りかかっていた。
買い出しにはメーザとゼネルが、あとの3人はバラバラになって町の中を色々とうろつく。
「それにしても陶芸の町というだけあって、壷とか皿が多いなぁ」
お土産屋を見てみると、美しい装飾の壷や皿をかなり見かける。
どれも高価そうで、割ってしまうと大変な感じだった。
「? プリス?」
パラドは、ある店の前で店主と話していたプリスの姿を見かけた。
「このお皿・・・他のと雰囲気が違うようなんですが」
「そのお皿かね? それは、かの陶芸師・『ルツボ』殿が作られた自慢の一品でね。
 しかし彼は町の中で商売していず、近くの草原に一軒家を建てているのだよ。
 で、私はその皿を交渉でちょっと値切ってもらってね・・・」
「陶芸師、『ルツボ』・・・、ありがとうございましたっ」
プリスは情報集めをしていたらしく、店頭に並べられていた数々の皿の中に、
1つだけ古風で独特な感じの皿を見つけた事から、店主に詳しい事を聞いていたようだ。
「君、ひょっとしてルツボ殿に会いにいくのかい?
 ・・・ちょっとやめといた方がいいよ?」
「え、何でですか??」
店主の引き止めに、プリスが足を止める。
「ルツボ殿はかなり怖い人でねぇ、失敗作を作った日なんかそりゃもう思い出しただけで・・・
 ・・・ひぃいいいっっ
その店主にとってはトラウマモノらしく、プリスは少し眉をひそめる。
「わ、わかりました。
 でも注意は聞きましたけど、一度は会ってみたいものですので・・・」
「ま、まあ君がそういうならいいんだけどね? いつも怖いって訳でもないし・・・
 それに、ルツボ殿には可愛い一人娘もいるからね。
 なんでも、商人と弓使いをやっているらしいよ」
弓使い、ということは多少戦闘知識も持っているだろう。
「よし、次はそこ行くか?」
「わっっ、パラド・・・いつからそこに?」
「だーいぶ前からだよ。
 ってか警戒心の欠片も無いのか・・・」
確かに、さっき京蘭に後ろから攻撃された時も警戒心が無かったため驚いたのだ。
いつもいつもというわけにはいかないが、多少は残していた方がいいなと、プリスは教訓した。



「道具調達完了ー!」
集合場所だった宿に、買い出し班のメーザとゼネルが帰って来た。
「情報は何か集まったか・・・?」
「んーと、この町を北に真っすぐ向かうと海に隣接するらしくって、
 その近くには、海上都市・『ハバード』ってとこがあるらしい」
海上都市ハバードは、今のポップスターでも特に文明発達の最先端として有名な大都市であり、
プププランドの都心『バタービルディング』とは鉄道が結ばれている程だ。
「この近辺には目立った洞窟とか建造物は無いようだが・・・、
 あ、そういえばプリスが言ってたアレは?」
「アレ・・・って、さっきの陶芸師さんの家の話?
 んー、確かにここからそう遠くないって店主さんも言ってたし・・・」
それに、弓使いの娘がいるとのことだ。
戦力が1人でも多くなればいいのだが、親がいるとなると難しそうである。
「だけど、5人ってのは多そうで意外と少ない人数だからな。
 海上都市なんてデカい所行く前に、寄り道程度で行くのもいいだろう」
RPGは宿を出て、噂のルツボの家へと向かう事にした。



店主の言っていた通り、町がかすかに見える程度の草原の真ん中に、
寂しい程にポツンと家が一軒建っていた。
森の中と言うわけでもなく、大きな岩が側にあるわけでもなく、本当に草原の真ん中。
あまりにも殺風景すぎて、家なのかどうかさえ思った程である。
「あんな立派な町があるのに、草原の真ん中に一軒家を建ててる・・・か」
「だがいくらなんでもこれは・・・一軒家にも程がありそうな・・・・・・」
とりあえずドアノブに、『店主います』と書かれたプレートがぶら下がっていた。
この家自体が、どうやら店として成り立っているらしい。
「入ってみるかっ」
ドアノブに手を触れて回し、ドアを開ける。
「・・・すみませーんっ」
一番に入ったプリスが、声をかける。


「いらっしゃい」
目の前。
目の前というか、ドアに当たるのではないかというくらいにゼロ距離。
プリスの視界にいきなり、頭にお皿を乗せた緑色のカービィが。
「   」
全員が目を思い切り開けて驚く。
1人1人リアクションは違っていたものの、変なポーズを取っていた。
「驚かせてすまんねぇ、外から声が聞こえたもんで」
「え、あ、えっと、ル、ルツボさん・・・でしょうか??」
「うむ・・・私が店主の『ルツボ』である・・・。
 ・・・見た所君達、商人では無さそうだが・・・・・・?」

RPGの心の中で思っていた事は、5人ともほぼ同じものだった。

(こ・・・怖い・・・・・・)
目つきはとても鋭く、
それどころか乗っていた皿のせいで頭が隠れていたために出来た影によって、さらに鋭く見えた。
声にも独特の迫力があり、同じ高さから喋っているようには思えず、
今にも上から巨大隕石が降り注ぎそうな程プレッシャーがあった。
「あ、えっと・・・、セラミークの町で見かけたお皿を見て、
 店主さんからルツボさんの事を知りまして・・・・・・」
「セラミークの町の・・・ふぅむ、わざわざ私に会いに来たのかね?
 ・・・見学もいいが、売り物もあるから気をつけるのだよ?」

とりあえず頷くだけ頷き、ルツボの視線を少々気にしながらも、数々の素晴しい陶芸品を見学することになった。




見学から数分後、黙り込んでいたルツボが口を開いた。
「・・・・・・あー・・・今から私は陶芸のため奥の部屋にいくから。
 すまないが、家を一旦閉めるから・・・、・・・そうだ」

「?」
ルツボは何かを思いついたらしい。
「私の一人娘がまだ、この草原周りで狩りの最中なんだ。
 しかし今から家を閉めてしまうから、多分帰って来たときに困ってしまうかもしれない。
 ・・・時間があれば君達、娘に会って伝えてくれないかな?」

恐らく店主が言ってた、『商人と弓使いをやっている娘』のことだ。
本当はこちらが今回の目標であり、彼女を旅の仲間に誘えないかどうか悩んでいた。
「時間はあるので構いませんが・・・えっと、名前は何でしょうか?」
「『アロウン』という名前でね、漢字で『亜』『狼』『雲』と描くのだよ。
 私と同じ緑色の体で、耳の大きいのが特徴だ。
 語尾に、『なり』と付くから多分わかると思うよ」

「わかりましたっ、行ってきますっ」






「草原周りで狩りってことは、そんなに遠くにはいないハズだよね?」
「恐らく・・・弓使いなんだから、遠くから獲物を狙撃する為に風上とか岩の影にいるはず」
それらしき場所を探してみたものの、特にそんな所は見当たらない。
見渡す限り草花が生えた平坦な場所で、山に囲まれた場所の割には多いわさえ見当たらない。
「?」
メーザが突然立ち止まる。
「メーザ?」
「しっ・・・・・・声がした。
 それも、『なり』という単語付きだ」
「!!?」
5人は声を殺し、空気に集中する。

「..........なり〜〜!!」
「こっちだよ!!」


声のした方向に駆けつけると、緑の体に白いフワフワ帽子、そこからはみ出た垂れ長耳のカービィが、
何やら鈍色に光り転がる重そうな敵の大群に追われていた!
「固すぎて矢が通らないとか、どんだけなりかぁ〜〜っっ!!?」
「『なり』・・・あの子が『亜狼雲』だ!」
「襲っているあれは・・・、『アイアンバギー』か!!」

【アイアンバギー】:カービィ族程度の大きさを持つ鉄皮ダンゴムシ。丸まった姿は『ウィリー』によく似ている。

『ギルルルル!!!』
転がっていた8体程のアイアンバギーのうちの1体がジャンプし、亜狼雲を轢き潰そうとする。
「こっ、このっ! 『ボウガン撃ち』!!」
『! ギルッ・・・!!』
持っていた弓を縦から横に持ち替え、ボウガンのように素早く撃つ。
命中精度は普通撃ちより少し劣るが、これだけ近距離であれば当たらない事は無い。
鉄皮に当たった矢が今度は貫いたらしく、アイアンバギーは体を丸めるのを解除した。
「どわわっ、あ、危ないなりっ!」
丸まりは解除されたが、どちらにしろのしかかって来たら元も子もないため、亜狼雲は素早く回避した。
『ギィルルルルルゥウ!』
しかし回避してもまだあと7体が転がってくる。
しかも、何体かが先回りしていたため囲まれた形となった。
「にに、逃げ場が無いなり〜〜!!」
このままでは轢き潰されてしまう、亜狼雲がどうしようもなくなり目を閉じた瞬間、

「『無心集中』・・・『水平斬』!」
「『ショック』!」
「瞬触流・『落』!」
「ウェポンバレット・『ボム』!」

聞き慣れない声が一斉に聞こえ、一体何が起こったのかと亜狼雲は頭が混乱していたが、
すぐに上体を起こして目を開く。
そこには、轢き潰そうとしていたはずが横たわっていたアイアンバギーたちと、RPGの4人がいた。
「ギリギリセーフだねっ!」
「うわっ??」
亜狼雲が見ていた方向の真後ろからプリスが話しかけたため、亜狼雲は驚いてしまった。
「あっ、驚かせてゴメンッッ、ケガは・・・無いかな?」
「だ、大丈夫なりっ、助けてくれてありがとうなりっ」
しかし全部のアイアンバギーが倒されたかと思いきや、2体程がまだ起き上がれる状態であった。
「くっ・・・しつけぇなっ」
『ギ・・・ギ・・・ギ』
ところが残ったアイアンバギー2体からは戦意は見られず、RPGに背を見せてそのままどこかへと去っていった。
つまり敵前逃亡である。
「・・・ふぃ〜、なんであんなやつがこの草原にいるなりかぁ・・・」
「? 前まではいなかったの?」
「つい最近になって見かけるようになったなり・・・最初は1匹程度が数ヶ月に1回だったのに、
 今はもう1週間に何回か、それに4匹以上も出てくるなり。
 本来あいつら、確か山の中にしか出て来ないって父ちゃんが言ってたのに・・・」
自然界でも見かける、住処を追われた生物達の出現場所の変化、アイアンバギーもその1種らしい。

「父ちゃんって・・・ルツボさんの事だよね?」
「? そうなりけど、ひょっとして父ちゃんの知り合い?」
「知り合いっていうか・・・今さっき、ルツボさんの家で君に伝言をって言われたんだ」
「あ、じゃあオイラの名前も知ってるんなりね? 一応紹介するなりっ、オイラの名前は『亜狼雲』なりっ」
やはり間違いは無く、目の前にいる緑の体をした弓使いが『亜狼雲』であった。
RPGも1人1人自己紹介し、一同はルツボの家へと戻ることにした。



「父ちゃんが陶芸中なりか・・・これはひょっとして・・・」
「?」
「うぉおおおおおおおおおお!!!!! ダァアアアメだああああ!!!!!!!」
家の前に来た所で、中からドスの利いたけたたましい声が。
「・・・・・・、・・・今の・・・ルツボさんの声???」
「父ちゃん・・・きっとまた失敗作作っちゃったんなり・・・;」
「職人の・・・職人の名が泣くわぁあーーーー!!!!!! うおあああああ!!!!!」
そしてさらに中から陶器の割れる音。
もはやその情景が頭の中に思い浮かぶが思い浮かべたくもない複雑な状態だと言う事が分かる。
「・・・で、いつになれば戻れるのかな」
「とりあえず1時間後にもう1回ここに来る事にするなり。
 父ちゃんは夜になっても出来なかった場合は諦めるなりから」
果たして、RPGは亜狼雲を仲間に出来るのだろうか・・・・・・







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜

「弓使いになりたいのはわかるが・・・・・・むぅ」
「父ちゃんの気持ちもよくわかるなり、けど、オイラは・・・」
「・・・そーいやオレ達ってさ、いつから目標とか決めてた?」
「自分で決めた道・・・狩りをする人生に、後悔はしてないなりっ」


〜TO BE CONTINUE......〜




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