洞窟のようなトンネルを抜けたRPGの一同。
その途中で、気絶していたメーザも何とか復帰し、
目的地『赤暁月』の村へと向かっていた。

「あのトンネルの出入り口がまだ見えてるから、この辺りのはずなんだが・・・」
「多分、この坂道の先だと思うんだけどっ」
地図によると、さきほどのトンネルからそう遠くない場所に村があるらしい。
プリスが地図を確認しながら歩いていたが、どうやら他の場所よりも一際高い場所のようだ。
「ってーことは、この坂道を上ればすぐってことか!」
相変わらず真っ先に突っ走るパラドとゼネル。
他の3人の足がほとんど追いつけない程に、2人はすぐに走り出した。
坂道の一番上まで行ったせいか、プリス達の視界からはすでに2人がいなかった。
「ボク達も続くよっ!」
気絶から覚めたばかりのメーザはウォールに負ぶさっていたので、
実質プリスだけが走り出したわけなのだが。

「はっ、はっ、はっ・・・・・・うわっとっ!?」
坂道を上り終えて走り終えたプリスだが、何かにぶつかりそうになった。
その何かとは、先に坂道を上り終えていたゼネルの背中だった。
「ど、どうしたのさ? 何でそこで突っ立ってるの?」
「・・・・・・なんてこった」
「?」
同じく、パラドもその場で立ち止まっていた。
後ろから歩いて追いついて来たウォールとメーザが、立ち止まっていた3人に話しかける。
「お、おい、パラド? ゼネル? どーしたんだよ・・・」



「村が・・・・・・」
「・・・壊されてた・・・」


「・・・・・・え・・・」

パラドとゼネルの発言に、残りの3人が少し驚く。
2人の背中のせいで見えなかったプリス、後ろの方にいたので見えなかったウォールとメーザも、
すぐに隣まで走る。

5人の視界に映ったのは、お世辞にも『村』とは言えないほどの『廃虚』だった。
家の壁だったのだろうガレキの山、和風の村特有のワラの屋根、
一部の家は半壊しており、あとはどこもかしこも無惨な姿だった。

「・・・・・・こんなことをするのは、やつらしかいない」
「『H・P』・・・! どこまでも酷ぇ奴らめっ・・・!!」
ウォールは、もし今目の前にH・Pの団員がいたらと思うと と言わんばかりの殺気をむき出していた。
「ウォール・・・、・・・と、とにかくっ、村を少し調べようよ。
 ・・・ひょっとしたら、何かまだ小さな情報みたいなものでも残ってるかもしれないし・・・」
「そうだな・・・赤暁月がこうである以上、ここで休憩は出来ない。
 せめて、有益な情報でも見つかればいいんだが・・・・・・」


改めて赤暁月の村へと到着したRPGは、半壊した家の中や積み重なったガレキの下等を詮索する。
村自体は結構広く、広さだけで言えば『町』といってもおかしくない程だった。
この村のシンボルだったのだろうか、町の少し離れた場所には巨大な木がそびえ立っていた。
村の状態と同じように、その木もすでに枯れ木となっていたが。

「これは・・・・・・桜の木だな」
「メーザ、わかるのか?」
「ああ。 それも、普通の桜というわけでも無さそうだ。
 ・・・・・・霊力か何かの残りカスが、木の周りに残っている。
 ・・・じき、消滅してしまうだろうが・・・・・・」
「ひどい・・・こんな大きな桜の木まで・・・」

H・Pの徹底ぶりがよくわかるほど、それほどまでに村全体の壊滅状態は激しかった。
半壊した家が多いものの、それでも軒数としてみれば全壊した家よりも少ないのは明らかだった。
『赤暁月』は、『フォレステイン』と比べると2倍以上大きい村だった。
小さな村を片っ端から壊していき、中間拠点地として築き上げていくやり方のH・Pにしては、
何故この大きな村を狙ったのだろうか。
ひょっとしたら、この村自体に何かしらの理由があったのかもしれない。
・・・だが、それは今のRPGには分からない話であった。


その真実を知っているのは、桜の木だけである。



「・・・結局、有益な情報や生存者等は見つからず、か・・・」
「仕方ねぇな、今日はここで野宿か?」
ゼネルが家の壁にもたれかかり、空を見上げる。


.........空を見上げた時、視界の一端に何かの影が見えた。
半壊した屋根の上に誰かがいる!
夕陽を背にされていた為に顔までは見えなかったが、右手には.........


「!? ナイフ・・・!?」
ゼネルがすぐさま臨戦態勢を取る。
他の4人はゼネルのいきなりの行動に驚き、目線を集中させてしまう。
「ゼ、ゼネル!!?」
「気をつけろ! 後ろの屋根に何かいるぞ!!」
「!?」
その発言にすぐ後ろを振り返った4人、
と同時に、屋根のうえにいた何者かがRPG目掛けて飛びかかって来た!

「うわっ!!?」
「い、いきなり何!?」
飛びかかって来たのは、和風の村原産の女性用の衣を着ていた
「カ・・・カービィ族・・・・・・!?」

右手には、ナイフというよりは包丁の形をした小さな刃物を持っている。
「・・・ウ・・・ア・・・・・・ア!」
そのカービィは苦痛に呻くかのような声を出しながら、持っていた刃物でRPGに執拗に襲いかかる。
「な、何なのさ君は!?」
「話してるヒマねーだろ・・・! っ、そっちから襲って来たからには、正当防衛でいくぞ!」
身の危険を感じたパラドが真っ先に攻撃の構えを取る。
「喰らえ、瞬触流・『嘴』!!」
おなじみの『嘴』でそのカービィに俊速の拳を当てる。

(・・・!?)
真正面から『嘴』を見事に喰らい吹き飛んだのだが、
技を出した本人であるパラドは、拳を当てた際に違和感を感じた。
「パラド、どうした!?」
「・・・冷たい・・・・・・?」
瞬間しか触っていなかったものの、パラドは吹き飛ばしたカービィの体が冷たい事に気付いた。
カービィ族もまた、一定の体温を保つ『恒温生物』として分類されている。
確かに例外として『変温』のカービィ族もいるわけなのだが、今の空気と比べても冷たすぎる程だった。
「冷却剤を殴ったような感じだった・・・一体あいつ・・・!?」
「イ・・・・・・ガァ・・・・・・ミ、ミ・・・ヅレ・・・・・・!
 『キョウ・・・ラン』・・・、イ・・・・・・テル・・・ツ・・・ラ・・・ネタ・・・・・・シイ!!
 ・・・コ・・・コロ・・・・・・ス・・・!!」

ムクリと起き上がり、片言で何かを喋っていたようだが、名前らしき単語も含まれていた。
「『キョウラン』・・・? それがお前の名前かっ!?」
「・・・カン・・・ジ・・・・・・『京』・・・『蘭』・・・・・・・!
 コ・・・レ・・・イジョ・・・・・・ハ・・・ナ・・・ナニ・・・モ・・・・・・シ・・・
 ガ・・・ァ・・・アアアアア!!!!」


『京蘭』と名乗ったそのカービィは、先ほどから全身を震わせている。
呻いているだけではなく、どうやら苦痛が消えていないらしい。
その痛みが狂った殺意を芽生えさせているらしく、先ほどから必死な表情でRPGを睨みつけている。
「プリス! 話が通じない相手じゃどうしようも・・・!」
「待ってっ! 一体何が原因で痛くて苦しんでいるか分からないよ! 『ヒール』!」
プリスが京蘭に対して回復呪文を唱える。
だが、ヒールの呪文が効いていないらしく、京蘭は未だに苦しんでいる。
「一体何が・・・!? _≡‖・・・『リペア』!」
単なる外傷による苦痛ではないと見たプリスは、今度は病かなにかで苦しんでいるものかと考え、
毒や麻痺などの内部損傷、及び昏睡や暴走といった精神的損傷を回復する『リペア』の呪文を唱えた。

ところが、そのリペアの呪文さえも効いていなかった。
「そんな・・・!? 何で苦しんでいるの!? 何が原因なの!!? ね・・・」
「イ・・・テ・・・ル・・・ヤツ・・・ネ、ネタマ・・・・・・シ・・・・・・ィ・・・!!!
 ダ・・・ダカ・・・・・・ラ・・・ミチ・・・・・・ヅ・・・ゥ、ガ、ア、ア、アアアア!!!」

「うわぁ!!」
京蘭は苦痛の限界からか、暴走を引き起こしてプリスに襲いかかる。
間一髪で回避したプリスは、今はこれ以上の手助けは出来ないため、逃げに専念する事にした。
「ダメだ・・・ここは一旦立ち去ろう!」
「ってなこと言っても、アイツ足早ぇぞ!?」
「マ・・・テェ・・・ッ!!」
京蘭の走るスピードは、RPGの5人全員よりも明らか上回っていた。
「そうはいかない! ↑◯≡・・・『クイッカー』!」
プリスは詠唱を素早く行い、一時的に味方の素早さを上昇させる呪文・『クイッカー』を全員分唱えた。
足の速さがいつもより大幅に上昇したRPGに、京蘭はあっという間に引き離された。
・・・それ以前に、一定の場所まで行った時、京蘭はその場で足を止めたのだ。


まるで、村に閉じ込められたかのように。







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜

「あんな立派な町があるのに、草原の真ん中に一軒家を建ててる・・・か」
「こ・・・怖い・・・・・・」
「一応紹介するなりっ、オイラの名前は『亜狼雲』なりっ」
「職人の・・・職人の名が泣くわぁあーーーー!!!!!!」


〜TO BE CONTINUE......〜




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