全てが消え去ったとともに、スイレンのトラスフォルムも解かれ、
普段の桃色の体が、闇が浄化されていつもより眩しい
ナチュラルランドの中心で目立っていた。



「・・・」
バッドネスキューブも消え去り、この事件は終わった。
だが、戻って来ない物も数多くあった。
「・・・ゼネル・・・・・・取り込まれたみんなも・・・」
バッドネスキューブに取り込まれ、
闇のエネルギーを注ぎ込まれて犠牲となった者たちは、
結局戻って来る事は無かった。
かろうじて闇のエネルギーに打ち勝ったメタナイトは、今は家で安静にしているが・・・。
「・・・・・・ゼネル・・・」
取り込まれた者達の中で、スイレンが一番気にかけていたのはゼネルだった。

どんなに怒りのエネルギーを解放しても、
どんなに張本人であるバッドネスキューブを全力で倒しても、
戻っては来ない。



「・・・・・・」
怒りが消え去り、替わりに悲しみが心の中に残る。
その悲しみを持ったまま、スイレンは家に帰ろうとした。



『・・・待って・・・』
ふと、何かの声が聞こえた。
その方向をスイレンが見ると、
眩しく光る水晶玉のような物が浮かんでいた。
『バッドネスキューブ・・・あの闇の箱を・・・
 キミが壊してくれたんだよね・・・』

水晶玉から、その声はした。
少し驚いていたスイレンが、軽く頷く。
『・・・あの箱は、全てを絶望に陥れる闇の塊・・・
 いわば、『パンドラボックス』とも呼ばれる物だった。
 ・・・・・・キミは、パンドラボックスの最後に残った物が
 何だか分かる?』

スイレンには、パンドラボックス自体が何なのかもさっぱり分かっていなかった。
もちろん、スイレンは首を横に振る。
『・・・『希望』。
 それが、この水晶玉・・・・・・
 ・・・闇から解放してくれたお礼として・・・
 ・・・・・・たった1つの望みを叶えてあげる・・・』

スイレンは、そのたった1つの望みをすでに考えていた。
ひょっとしたら、スイレンは好物の食べ物の事も考えていたかも知れない。



けれど、今戻って来て欲しいもの。
本当に、叶って欲しい望み。
スイレンは、その望みを口にして答えた。

「・・・ボクの望み・・・・・・
 ・・・・・・ゼネルを、
 いや・・・今回の騒動で命を失ったみんなを、生き返らせてっ!!」
『・・・キミなら、何があろうとそう答えると思っていたよ・・・
 ・・・・・・その望み、叶えてあげるよっ』




水晶玉が空高く浮き、音を立てて割れた。
割れた欠片は光の粒となって、
ナチュラルランドだけでなくプププランドにも届いた。

バッドネスキューブの魔の手にかかって犠牲となった者達、操られたボスも、
そして・・・・・・



「何だこれ・・・光の・・・粒?」
「闇が完全に消え去ってるってことは、
 スイレン・・・やったんだなっ!」
「・・・? コウヤッ!」
「へ?」
コウヤの腕の中でピクリとも動かなかったゼネルの体が、
ピクッ と動いた。
「・・・ん〜・・・・・・」
先程まで、全く口も動いてなかったゼネルから、声が。
「・・・・・・あり?」
目を少し開き、寝ぼけているかのように情けない声が聞こえた。
「・・・死んだんじゃなかったのか?
 ・・・・・・何で生きてるんだよ・・・」
この発言は、ゼネル自身のものだった。
ゼネル本人が、自分に対して何故と疑問をぶつけていたのだった。



「おぉーいっ、みんなーっ!!」
ナチュラルランドのある方角から、スイレンの声が聞こえた。
「スイレン!!」
「ゼネルが、ゼネルが生き返ったよ!」
アサギの発言に、スイレンがこれ以上無い喜びの顔を見せる。
「ゼネルッ!!!」
喜んだ顔で涙を流しながら、ゼネルにスイレンが飛びついた。
「ス、スイレン・・・・・・
 ・・・ばかやろう・・・・・・
 何で、何でオレなんか・・・・・・・・・」
心が複雑なままのゼネルに、スイレンはこう答えた。
「キミも、ボクと同じ『スターヤード』だからだよっ!
 仲間でもあるし、友達、そして『家族』だから!!」



ゼネルは、スイレンのその言葉を聞いて・・・
「・・・ちっくしょう・・・泣かせやがって、この野郎ーっっ」
その発言とは裏腹に、涙も流さず、
泣き顔どころか笑いながらスイレンをペシペシと叩くゼネル。
「痛い痛い、痛いってゼネルッッ」
「うっせーやいっ」
「はははははははっっ!」



・・・そして。
「ゼネル・・・どこへ行くの?」
「うん? ・・・ま、一人旅ってことで」
あれから少し日が経ってから、ゼネルはスイレンの家を離れることになった。
スイレンのように『英雄』になりたいという夢を、
まだ諦めてはいなかったのだ。
「旅で自分を鍛えて・・・で、スイレンともし、
 旅先でまたあったら、その時は・・・仲間になるぜっ」
「・・・うんっ!!」






そうして、ゼネルが旅を初めて・・・
・・・・・・400年後の現在。

「ねぇゼネルッ! とっくに朝だよー」
「んー・・・? ・・・もう朝かよ・・・」
「いや、どんだけ寝てるんだよ? いつもよぉ・・・」
「さぁて、プリス、メーザ、パラドッ、用意はできたかっ?」
「オッケーだよ、ウォール!」
「・・・魔力は回復した・・・・・・今日も頑張ろう・・・」
「ゼネルッ、早く早く!」
「わかったわかったっ、今すぐ行くよっ」



スイレンの子孫、プリス率いる『RPG』と共に、
ゼネルは旅をしている。







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜

「この山のトンネルを抜けなきゃいけないのか」
「ミ、ミッドバットの親玉!?」
「全滅確定ってか・・・・・・? 大ピンチじゃねぇか・・・」
「プリス・・・その姿は!!?」


〜TO BE CONTINUE......〜




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