マフィトゥの村でパラドを仲間に加えたRPG。
次の目的地は、和風の村の『赤暁月』。
ただ、そこに付くまでに結構な距離があるうえに、
途中には長いトンネルのようなダンジョンがあるとの事だった。

「赤暁月に行くまではしばらく野宿続きだな」
「一応マフィトゥの店で道具の整頓はしたけどねっ」

今回の購入:
【プラスブレスレットb】:魔力+7  装備:メーザ
【ライトガード】:打撃・斬撃・適応防御力+6  装備:プリス
【ブロンズナックル】:打撃攻撃力+9  装備:パラド
【薬水】HP25%回復 1つ
【健康丸】拘束・レム睡眠・混乱等を回復 2つ
【即席魔弾・赤】誰でも使える魔法道具・炎属性 2つ


「1つ前に装備してた弱い物は売却完了したな」
「即席魔弾はオレやパラドにも使えるから、結構便利なんだよな」


いつも通りの道中での会話。
そんな会話の中、時折襲ってくる暴走した魔物。
ピンチになる時もあるし、余裕で倒して行く彼ら。
・・・そんな彼らを、後ろからこっそりと付いてくる1人の影が。


影に気付かないRPGの前に、幾度となく魔物があらわれる。
「うひゃっ・・・また魔物!? しかも結構色んなのがいるし・・・」
「これで今日何度目だ?」
「8度目くらいじゃないか? まーでも、体動かすにはもってこいだけどな!」
バテているプリスをよそに、戦う気満々のパラドはすぐに魔物と対峙する。
今出て来た魔物は、どれも斬撃タイプの敵だ。

【インフェルイート】:アリジゴク改めカービィジゴク。両腕のトゲの手で挟んでくる。
【クロウバード】:爪が巨大化したモノバードの亜種。ただし、爪以外はモノバードと同じ。
【スカルファング】:他の生き物の牙の骨を器用に扱う小人型の魔物。言語能力を少し持っている。


『食イ物ヨコセッ! 食イ物ヨコセッ!!』
よほど腹をすかせていたのか、スカルファングがいち早くRPGに襲いかかる。
ターゲットはプリスだ。
「今までのボクだったら攻撃手段は杖しか無かったけど・・・!
 〜ー≡・・・『ヒューラ』!」
本来ならば杖で殴って戦うのがプリスの戦法だったが、
今魔物に襲われる前の戦いで自身のレベルが上がり、新たな呪文をいくつか習得したのだ。
そのうちの1つが『ヒューラ』の呪文で、杖の先からほんの一瞬だけ突風が吹いた。
『フ、フ、吹キ飛バサレル・・・!! ギ、ギアアアッッッ!』
小人型で体も小さかったスカルファングは、持っていた牙や被っていた帽子等を残して
突風によって遠くへと飛ばされて行った。

『キェェエエエエッ!』
スカルファングの一瞬後に、クロウバードがウォール目掛けて飛び蹴りを当てようと飛び跳ねる。
モノバードと違って爪が鋭いクロウバードの蹴りに当たったりしたら、かなりのダメージを受けるだろう。
「ちっ・・・! 爪のせいで剣をガードされるっ・・・!
 水平斬はジャンプで避けられてしまうし・・・!」
水平線と平行に切り裂く『水平斬』を、ジャンプ力が自慢のクロウバードは軽々と避ける。
同時に避けて飛び跳ねた勢いで、鋭い爪を立てて踏みつけようとしてくる。
「相手がジャンプするって言うのなら・・・!」
ウォールは、クロウバードのジャンプするタイミングを見計らって、自分も目一杯ジャンプをした!
丁度、クロウバードが地上にいたウォールを踏みつけに落下する所だったため、
クロウバードよりもギリギリ高い位置に到達したウォールは、縦に思いっきり振りかぶる!
「新必殺! 剣技・『鉄降下』!!」
『!?』
原理としては大根切りのような感じなのだが、下方への重力と振りかぶりによる勢いによって
クロウバードを見事に縦に真っ二つに切り裂いた。
その傷口は全くムラがなく、完全に直線に切れていた。
「ウォールッ、傷とかはない?」
「あぁ、問題無いよ」
プリスとウォールは、敵が遺していった道具等を素早く回収する。

「こっちは片付いたよっ! メーザとパラドはっ!?」
「こいつ・・・かなり硬い・・・!」
「今まで出て来た奴よりは、大分タフって感じだぜっ!」
最後に残ったインフェルイートは、あたかもサソリの殻のような硬さを持っており、
体を少し傾かせて対象の捕獲範囲に入ると、すぐにトゲを閉じて挟んでくる。
このトゲの鋭さ、つまり斬撃攻撃力が高いのは分かるが、
殻の硬さが打撃と斬撃どころか魔法防御力も兼ね備えているため、中々倒れてはくれない。
恐らく、この地域に出る魔物の中では攻守ともに強力な存在である。
「さっきから波動も撃ってるんだけどよっ、あんまり効いてねー様なんだ!」
「くっ・・・『ヒボウ』も『コリス』も『ミューバ』も当てたが・・・
 どうなっているんだ、この硬さは・・・!」
それどころかこのインフェルイート、援護として自分と同種族の仲間も呼び寄せてくる。
実はメーザとパラドが今戦っているインフェルイートは、他の魔物と一緒に飛び出して来たのとは違う。
その一緒に飛び出して来たのが呼び寄せた仲間であった。
「オレも何か協力しないと・・・、けど剣なんて効くのかっ?!」
「ウォール、さっき買ったアレ!」
プリスは道具袋の中から1つの物を取り出した。
ウォールはプリスからそれを受け取り、何なのかを見る。
「即席魔弾・・・! これならどうだ!?」
ウォールは、魔弾に書き込まれていた使い方の通り、試しに使用する。
敵目掛けて魔弾を投げ込み、魔弾が破裂する!
『ギッ!? ギ、ギ、ギギギギギ!!!』
通常の呪文とは違い、相手のガードを無視して一定のダメージを与える魔弾は、
インフェルイートに対して効果抜群だった。
破裂した魔弾が燃え盛り、インフェルイートを見事黒こげにした。


「外側のガードは硬かったが、肝心の中身が脆かったんだな」
「何とか倒せたねっ」
RPGが、敵の死骸に背を向けその場を離れようとする。
だが、

『・・・・・・ギ』
「!っっ!!?」
『ギィィィィィィ!!!!』
インフェルイートはまだわずかに息があり、最後の力を出したのか、
今まで以上の速さでプリスに襲いかかった!
「プリス!!」
「しまった、間にあわない!」
プリスが挟まれると思われた瞬間、RPGを後ろから付けていた1人のカービィが飛び出した!


「はぁああっ・・・『アイス』!!」
ヘルメットを被ったオレンジ色のカービィがプリスの前に立ち、
インフェルイートに氷の息を吹き付ける。
断末魔とも思われる小さなうなり声を立てながら、トゲが当たる直前でインフェルイートの体は凍結した。
「ちゃんと本当に倒したか確認しなきゃダメだろっ?」
「え・・・あ、ありがとう」
キョトン とRPGの4人がそのカービィを見ている。
先程、彼が使った『アイス』。
あれはまぎれも無く、大昔に伝説のカービィ『スイレン』が使っていた『コピー能力』だった。
今の世には、コピー能力を使えるカービィ族は1人もいないはず。
「・・・へへっ・・・あいつと全く変わらないな・・・・・・
 その幼さといい、可愛さってか優しさのオーラ? みたいなのは」
「? ? ?」
あいつ?
彼の言ってる事がわからなかったため、4人は少々悩む。
「で、こんなとこで何をしているんだよ。
 伝説のカービィの子孫さんはっ」
「・・・え・・・!!?」
桃色の目をしたカービィは、伝説のカービィの子孫。
その事を知っているのは、父のカーミラと姉のノベル、それにRPGの仲間かH・Pだけのはずだ。
だが先程の言動を聞く限りでは、H・Pの仲間でない事は分かる。
「お前・・・一体何者だよ・・・?!」
そろそろ痺れを切らしたウォールが、オレンジのカービィに問いかける。

「名前、言ってなかったな。オレの名はゼネル。
 『ゼネル・スターヤード』だ」
「スター・・・ヤード!?」

スイレンと、ノベルと、プリスと、全く同じ苗字。
スターヤードの苗字を持つのは、現在ではプリスとノベルだけかと思われていた。
「詳しい話は・・・まぁどっか野宿出来るとこでも探してからにするよっ」
ゼネル と言う名のカービィは、RPGの行こうとしていた方角と同じ方へと歩き始めた。
数々の疑問を抱えながら、山々に囲まれた夕陽の沈む草原を進む。


すっかりと日が暮れ、草原の真ん中の辺りで野宿をすることになった。
非常食を食べるRPGに対し、ゼネルは近くの木に生えていたキノコを食べている。
「んー、まずはどっから話せばいいんだろうかねぇ」
「えっと・・・・・・ゼネル・・・は、ご先祖様とは一体どういった関係・・・なの?」
スターヤード と聞かされては関係が気になるプリスが、ゼネルに質問する。

「・・・スイレンは昔、ある1つの事件を解決しようとした事がある。
 ・・・『鏡の国の暴走』事件。
 その時にスイレンが・・・何と言うかその・・・、好きだった奴、の闇の存在に斬られたんだ」
ゼネルの話を、4人は黙って聞いている。

「最初、その闇の存在はスイレンを殺すつもりで斬った。
 そのはずだったんだが、どこをどう間違えたのか
 スイレンの分身の4人が、本人の体から切り離された。
 ・・・分身だから当然スイレンとは違う思考を持っているわけで、
 結局事件が解決した後、分身が本人の体に戻ることは無かったんだ。
 で、鏡の国の暴走も止めたスイレンは、ポップスターでとうとう『英雄』と呼ばれる存在になったんだ」
ちなみにその時出た分身を、イエミチ・コウヤ・アサギ・ソラ と、スイレンを含む5人はそう呼ぶ事にした。
そして、斬られた際に出た分身は、先程の4人だけかと思われたのだが。

「・・・事件から帰って来た夜、スイレンの体に異変が起きた。
 ・・・・・・オレ的に言えば、何て言えばいいのかな・・・。
 よーするに、スイレンの中のわずかな『闘争心』までもが、スイレンから分離される、
 そんな感覚がしたんだ。
 ・・・その『闘争心』のカービィ、それが・・・・・・オレだ」
「!!・・・・・・」
4人は、最後の一文を聞いて驚きの表情を隠せなかった。
ゼネルが、スイレンの闘争心そのものだとは、誰も予想がつかなかったのだろう。
「ま、最初は敵対視してたわけでねっ。
 こんな平和ボケしてるやつの何が『英雄』なんだー とか思ってさ。
 それで、オレはスイレンとも戦った事があるんだ。
 ・・・結果は、オレの負けだったよ」
闘争心の塊であるゼネルより、闘争心が分離されたスイレンの方が強い...
かつて英雄と呼ばれたスイレンの天性の能力が、ゼネルのその一言でよくわかる。

「あれからもう400年・・・長いもんだ。
 ・・・あー、そういえば・・・子孫のキミ、まだ名前聞いてなかったな」
「あ、ボクの名前はプリスッ、プリス・スターヤードだよ」
「プリスか、いい名前だな・・・でさ、プリスッ。
 スイレンは・・・結局どうなったんだ? 生きてるわけ?」
ゼネルはどうやら、スイレンがまだ生きていると勘違いしているらしい。
プリスは、スイレンが生きていたのは100年前だと説明する。

「・・・そっか。
 結局、最後に別れてから全然会ってなかったしな。
 スイレンには色々世話になってもらって、何も恩返し出来なかった。」
ゼネルは、昔の事を色々と振り返っていた。
そんな彼に、プリスが抱え込んでいた1つの疑問をぶつける。
「そういえば、何でボクがご先祖様の子孫だってわかったの・・・?」
「・・・・・・カービィ族には絶対見られない、『桃色』。
 スイレンは、星の戦士に選ばれた特別な存在だったからか、その色をしていた。
 で、プリスの目の色を見てな、『まさか、スイレンの子孫じゃないのか?』って思ってさ、
 キミ達の後を付けてたってわけさ。
 へへっ、オレの予想は見事に当たってたなっ」
プリス以外黙っていた3人が、少し体を動かし、
ふむ・・・とため息をつく。

「つまり・・・まあ昔の事はもう置いておくとしてだ。
 今はもうスターヤード一族に対して敵対はしてないってわけだな?」
ウォールは、プリスを含むスターヤードに敵対視していないかどうか問いかけた。
「あぁ。
 ・・・スイレン・・・あいつは、オレの命の恩人だったから・・・な」
「・・・?」


ゼネルの昔話も終え、草原で眠る5人のカービィ。
「・・・本当に・・・『命』・・・の、恩人だったよ・・・・・・あいつは・・・」
・・・昔話を語ったゼネルは夢の中で、その『昔話』を思い出していた。







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜

「本体や偽物なんて、関係ない!!」
「スイレン・・・・・・オレも・・・英雄の存在に・・・なりたかった・・・・・・」
「感情が具現化した・・・『トラスフォルム』・・・か!!?」
「旅先でまた会ったら、その時は・・・仲間になるぜっ」


〜TO BE CONTINUE......〜




・小説一覧へ
・第8話(ゼネル・サイドストーリー)前編へ

・第9話へ

・オマケのNG