マフィトゥの村に住む『瞬触気放流』の使い手である聖戦士・パラド。
RPGは彼を仲間にすべく、彼と戦うことになった。
3対1とはいえ、相手は日々ハードな修行をこなしてきている。
プリス・ウォール・メーザも修行をしていたにはしていたが、
パラドと比べるとむしろ少なすぎるほどでもある。
果たして、そんな実力者に勝てるのだろうか?


「焦って先に攻撃した方がスキを見せるって言うしな。
 ハンデってことで、まずはオレの方から攻撃するぜ!」
先に動いたのはパラドの方だった。
さっき見たのとほぼ同じ気光波動を、RPGに飛ばして来た!
「っ! これ・・・跳ね飛ばせるのか!?」
「ウォール! 避けた方が無難だよ!」
ウォールは波動を剣で跳ね返そうと考えてみたが、
万が一それが無理であればダメージを受けてしまう。
プリスの言う通り、考えるのを止めて避けることにした!
「確かに攻撃後にスキがあるようだ・・・
 〜|‖・・・『レイニー』!!」
メーザはパラドの波動を避けた直後に、強い雨を降らせる呪文『レイニー』を唱えた。
雨雲がパラドの頭上周辺にどんどんと集まり、弾丸のような雨粒を大量に降らせた。
「これが呪文ってやつか! 格闘術しかあんま興味ねーオレには新鮮だなっ」
しかしパラドは大量に降って来た雨粒をものともせず、
雨雲の領域を抜けてすぐにメーザのいる方向へダッシュした!
「な・・・!!?」
「喰らえ! 瞬触流・『嘴』っ!!!」

パラドの右手が見当たらない。
メーザは一瞬怯み、一体何がどうなってるのか理解するのに時間がかかった。
だが、理解した時にはすでに遅かった。
メーザは、パラドの高速パンチを正面から喰らっていたのだ。
つまり、その速さ故に右手から繰り出されたパンチが全く見えなかったのである。

「メーザ!? い、今何が・・・!」
「なぁに、波動の拳バージョンなだけだぜ? 威力は全然違うけどなっ」
『嘴』の攻撃を受けたメーザは大きく吹き飛ばされ、後ろの木の枝にひっかかった。
「く・・・っっ! 一発の攻撃がすさまじい・・・」
今の一撃だけでもすでに致命傷である。
魔法使いタイプで打撃防御力が低いからなのかもしれないが、
それでも打撃防御力の高いプリスとウォールでも、当たれば大変だろう。
「今の技は瞬触流でもほぼ基本の内。 気光波動とセットで覚えるものだ」
「ってことは・・・まだ技があるの!?」
「ご名答っ! 今度は僧侶帽子のお前だ!」
パラドの次の標的はプリスに向けられた。
メーザと同じ魔法使いタイプでも打撃防御力は高いが、
果たしてパラドの攻撃を耐えれるものなのか。
第一、今のプリスには攻撃呪文などは覚えていない。
「今度はこの技だ! 瞬触流・『落』!!」
「こ、攻撃呪文は覚えていないけど・・・
 ↓◯/・・・『ウィーケス』!!」
パラドが踵落としを決める直前で、プリスの補助呪文が効果を発揮した!
踵落としは確かにプリスにヒットしたが、さきほどの『嘴』に比べると威力が軽そうだ。
「な・・・んだこれ!? 力が入らねぇ・・・!!」
「ウィーケスの呪文は攻撃力低下だからね、何とか致命傷は免れたよ・・・!」
しかし攻撃力が低下したとはいえヒットしたことに変わりはなかった。
プリスの左手が地面に付いている所を見ると、衝撃はかなりのものだったらしい。
「プリス! 援護頼む!」
「! オッケー!! ↑◯/・・・『シャーピィ』!」
次にプリスが唱えた呪文は、味方の攻撃力を上げる『シャーピィ』の呪文である。
ウォールの剣の周りを鋭気が纏い、斬撃攻撃力が少し上昇したのだ。
「うっわ! 呪文ってのはやっかいなものだなっ・・・!!
 ・・・打撃攻撃力が低下してるのか・・・なら!」
ウォールが剣を構え、横に切り裂く剣技・『水平斬』を繰り出そうとしたが、
パラドはその前に間合いを取るため後ろに下がり、気光波動の構えをとった!
(・・・? 攻撃力はウィーケスの呪文で下がってるはず・・・)
だが、ウォールのその考えは間違っていた。
もう少し深く考えていればそのトリックもわかったはずなのだが。

「油断したな!!」
「?!!」
ウォールに放たれた気光波動の大きさはさっきと全然変わっておらず、
攻撃力が低下されているようには見えなかった。
「ぐぁあっ!! なっ・・・どういう・・・!!?」
「ウォール!! ウィーケスの呪文は、
『打撃攻撃・斬撃攻撃』の攻撃力しか低下しないんだよっ!」
そう、プリスの説明通り、ウィーケスの呪文で低下するのはあくまでも
斬撃・打撃といった物理攻撃力である。
だが、パラドの繰り出す気光波動には打撃・斬撃といったものはない。
「これが『瞬触気放流』の特徴。 気光波動は『光属性』の攻撃ってだけだからな。
 物理攻撃とは関係ないから、いつでも安定して使えるのさ!」
メーザとウォールが大ダメージを受けた今、まだ体力的に存分に動けるのはプリスのみ。
「ヒールミナの呪文さえあれば状況を戻せるんだけど・・・!
 ヒールの呪文を2人分・・・は時間がかかって逆に危険だ・・・!」
一撃のダメージが大きいパラドが相手では、ヒールの呪文でウォールとメーザを回復しても
すぐにまた体力を削られ、プリスのMP切れは火を見るよりもあきらか。
それ以前に、ヒールの呪文を唱えるための詠唱時間もない。
「プリス・・・! 私達のことよりも、プリスが体力を残す事を優先するんだ!」
「お前が何とか耐えたら、あとはオレとメーザでパラドを攻撃出来る!
 恐らくパラドには、オレ達を一気に攻撃出来るような技は無いはずだ!」
持ち前の体力の多さと防御力の高さで自分が壁になれば、確かにウォールとメーザの攻撃で
パラドにダメージを与える事が出来るはず。
それに、先程からパラドは1対1で順番に攻撃をしてきている。
つまり、とどめを刺すための全体攻撃も持っていない事が予想される。
「わかった! 援護と回復に何とか徹するよ!」

プリスはまず自分に、防御力上昇の『ハーデス』の呪文をかけた。
『ウィーケス』のように、気光波動が相手だと意味が無いが、
打撃攻撃の方が怖いパラドの攻撃を考えると、こちらをまず優先すべきだろう。
「ちっ! これ以上強化されてたまるか よっ!!」
パラドはプリスに集中攻撃をしたが、先程打撃攻撃力を低下された状態のまま
さらにプリスの防御力は上昇されているのだから、怒濤の打撃攻撃はあまり通用しない。
「これならどうだ! 剣技・『熊蜂巣』!!」
ウォールは剣の持ち方を少し変え、槍を持つようなフォームに変えた。
『熊蜂巣』は、剣を複数回相手に高速で突き刺す技であり、運が良ければ大ダメージを期待出来る。
「そうはいくかよ! 瞬触流・『球』!」
しかしパラドの方も複数回殴打攻撃である『球』を繰り出して来た。
『嘴』より威力は劣るが、乱打を与えるため全てヒットすると『嘴』より効率がいい。
ウォールの『熊蜂巣』を、パラドの『球』は全て受け止め、スキが出来た横から蹴りを一発入れた!
「今のは単なる蹴りだけど・・・攻撃力がどうやら戻ったな!」
蹴りを喰らったウォールが苦痛の表情を見せている。
プリスの『ウィーケス』の呪文の効果が切れ、攻撃力が通常に戻ったらしい。

「このままじゃ一向に決着がつかない! ・・・どうすれば・・・!」
「しかし中々倒れてはくれないな・・・! 最後は気光波動でトドメにすっかな!?」
ここでプリスは『気光波動』の『光』と『波動』で何かを思いついたらしい。
「そうだ、こうすればっっ・・・!」
さり気なく立っている場所を変え、準備を整える。
「パラドッ! ボクの事はまだ倒さなくてもいいわけ!?」
プリスがパラドを誘導しようと挑発する。
「そーいや、お前が援護呪文とか出すから長引いてるんだよな・・・!!
 防御力が上昇しているようだが、気光波動はそんなの無視するぜ!!!」


狙い通り!
プリスは気光波動を出してくるのを狙っていたのだ。
ところが飛んでくる波動に対し、プリスは避けようともせず、全く動じなかった。
「おいおい、体で受け止めようとしてもムダだって言ってるだろ!?」
パラドの忠告も全く聞かず、波動がプリスのいた場所で爆発を起こす!
「プ、プリス!!?」
「あーあ、モロ直撃・・・。 何してるんだよ?」
爆発を起こした所から、目を閉じたくなるほど強力な光と爆風が起こる。
・・・この光と爆風を使い、
プリスは、位置を変えた事によって後ろにあった1つの木と合わせてパラドに接近したのだ!
「!? うおっっ!!?」
「でやああああっっ!!!!」
杖を野球のバットのようにフルスイングした結果、
光によって見えなかった場所から攻撃されたパラドはクリティカルヒットを受け、空高く飛ばされた!

「あの波動が当たる直前で後ろに勢いを付けてジャンプして、
 波動の爆風で後ろに凄い速さで飛ばされる。
 そして後ろにある木を使って、前の方へと跳んだってわけさっ。
 強い光で、パラドには多分見えなかったかもしれないけどね」
(波動と木を使って・・・!? ばかな・・・、2段跳びを使うだなんて!
 普通の奴には出来ない芸当・・・! ・・・とっさにやっただけで・・・)
落下している途中で、パラドは自分の技によってやられた事を悔やんだ。
(ちぇっ・・・やっぱオレってまだまだ未熟だよ・・・
 自分の出した光で相手の動きが見えないだなんて・・・)


結果。
パラドは自分の未熟さによりRPGに負けた事を認め、RPGの仲間となった。
「兄者・・・行っちゃうんですか」
道場を離れるパラドに、トウキとセンイが少し寂しい顔を見せる。
「すまないな。 ・・・だから言っただろ、『兄者って呼ぶのはよせ』って。
 まだオレは、そこまで言うほどの器じゃないんだよ。
 ・・・だからよ、ここにまた戻って来た時には、『兄者』って呼ばれてもおかしくないほどに、
 強くなって戻ってくるからよ!」
「そ、それでもっ! オレ達には、あなたは『兄者』ですからね!」
「・・・あっそう・・・」
結局、パラドは今でも『兄者』と呼ばれることになった。
正直パラドにとっては、少し恥ずかしいのかもしれない。
「そんじゃま、道場はしばらくの間まかせたぜ!」
「兄者っ! あとはおまかせを!」
こうしてRPGの仲間が1人増え、一同はマフィトゥの村を後にした。


「さて・・・次の目的地は・・・」
「確かこの方角なら、和風の村の『赤暁月(あかつき)』って所があるな」
赤暁月の村。かつての古風な文化が未だに語り継がれているという
珍しい村らしい。


RPGがマフィトゥから旅立った、次の日。
山道をすっかり抜けた一同を、川のほとりで休憩していたオレンジ色のカービィが見ていた。
そのカービィは、頭に一風変わったヘルメットを被っていた。
「・・・あの目・・・まさか・・・」
目線の先には、プリスが。







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜

「・・・へへっ・・・あいつと全く変わらないな・・・」
「スター・・・ヤード!?」
「ま、最初は敵対視してたわけでねっ」
「あれからもう400年・・・長いもんだ」


〜TO BE CONTINUE......〜




・小説一覧へ
・次の話へ

・オマケのNG   NG2