平原を歩いていたRPGの3人は、いつの間にか山道を歩いていた。
沢山の木が並ぶ森の中、魔物の鳴き声が四方からよく聞こえる。
「途中にも、暴走していた魔物が結構いたよね・・・」
「自然とのバランスが取れなくなってきて、それが原因になってるんだと思う。
 ・・・例えば、あいつらみたいにな」
「・・・・・・H・P・・・」
今のプププランドにも、文明化などが進んで緑の風景が消えて行ってる場所が多い。
動物となんら変わりない魔物も、自然とのバランスが崩れる事によって
突然変異や暴走等を引き起こすのだろう。


「? あいつら、村に向かってる?」
「何か武装してるよ・・・村を襲いに来たのかな?」
「そりゃ大変だっ、兄者に知らせないとっ」
「いや、ボク達だったら多分あいつら追い払えるよっ」
「んー・・・そうだよなっ。オレらの流派は、兄者から教わったんだからなっ」
RPGの歩いていた頭上の木の上で、2人のカービィが小声で話し合っていた。


「・・・」
気配にいち早く気付いたのはウォールだった。
足を止め、キョロキョロと辺りを見回す。
「ど、どーしたの? ウォールッ」
「何かいる。・・・魔物じゃないけど」
「・・・私達と同じ、カービィ族か?」
「恐らくな。ひょっとしたら、あいつらかも知れないな」
その言葉に、3人はすぐトライアングルの陣形で身構える。


「あ、バレたかもしれないよっ」
「仕方ない、じゃあちょっと威嚇攻撃を・・・」
先程木の上にいたカービィの片方が、手をゆっくりと後ろに回し、
「・・・てやっっ!!」
サイドスローの構えで何かを投げつけた!


「!? 避けろ! プリスッ!! メーザッ!!」
その何かが当たる前に、3人はそれぞれ別の方向へと回避した。
そして陣形をすぐさま立て直すと、進行方向側に2人のカービィが着地した。
「ここから先は、通さないぞー!」
「マフィトゥへ何のようだっ! 村を襲うなら許さないぞ!」
そのカービィ2人は、
片方が白色の体に黒い足の、黒ハチマキをしたカービィ、
もう片方が黒色の体に白い足の、白ハチマキをしたカービィで、
どちらもプリスより年下ぐらいの子供カービィだった。
「こ、子供?」
「青い体のオマエが言うなっ! オレ達と変わんないだろっ!」
「それはともかく・・・キミ達は一体・・・・・・?」
メーザが2人の子供カービィに問いかける。

「オレはトウキで、こっちがセンイ。黒の体がオレだからなっ」
「マフィトゥの村は、武器を装備してるようなやつが易々と入っていいとこじゃないんだぞっ」
半分呆れたようにして、ウォールはトウキとセンイの話を聞いていた。
「へいへいそうですかっ。 ・・・で、そう言えばさっき投げつけたの・・・ありゃ何だ?」


「あー、それについてはオレから話すぜ。トウキ、センイ、まずはその人らに謝れよっ」
突然、頭上から声がしたが、さっきと違って今度はどこにいるのかわからない。
「あ、兄者っ?! 何でですかっ」
「その『兄者』って言うのはやめろっての」
その発言と同時に、ハチマキっぽいものを巻いた黄緑色のカービィが降りて来た。
「弟子が迷惑かけちまったな。オレからも謝るよっ」
「あ、いえ・・・えっと、キミは一体?」
プリスの発言に、一瞬だけ眉をひそめる。
「・・・見たとこお前年下なのに、『キミ』発言か・・・まあいいや。
 オレは、『瞬触気放流』という流派を代々受け継いでる聖戦士、『パラド・フィルタッシュ』だ。
 んでこいつらが、弟子のトウキとセンイ」
「・・・いきなり攻撃してごめんなさい」
少々不満があるのか、2人はしぶしぶと謝った。
「あ、うんっ・・・えっと、ボクの名前はプリスって言うの」
「オレはウォール」
「・・・メーザ・・・」
パラドが自己紹介をしたので、3人も自己紹介をした。

「募る話が色々とありそうだな。まずは、村へ行くか」
パラドが村へ行こうとすると、木の上からコウモリのような魔物が7匹ほどあらわれた!
テリトリーに侵入したわけでもないのに、襲いかかろうとしている。

【ミッドバット】:足が無い代わりにロープのような尻尾が生えているコウモリ型の魔物。眠る時はその尻尾を枝に巻き付ける。


「ちっ・・・、また暴走した魔物かっ」
プリス、ウォール、メーザが戦おうとしたが・・・
「ちょい待ったっ。今日のオレ達の修行にもってこいだ。
 トウキ、センイ、行くぞっ!」
「え、あ、ちょっと・・・?」
プリスがパラド達を止めようとしたが、そんなヒマもなくすぐに戦い始めた。

パラドとトウキとセンイの流派なるものを3人は見ていたが、少しおかしい所を発見した。
「・・・あれ?」
「どうしたんだ? プリス」
「さっきさ、あの手当たった?」
「え、あんな距離で・・・?」
確かに、ミッドバットはパラドに殴られたようなのだが、
肝心のパラドの手は、ミッドバットには到底届かない距離であった。

「・・・それだけじゃない。 ・・・まるで、触ってないような感じがする」
「さ、触ってない? あんだけ殴ったり蹴ったりの行動をしているのにか?」
「いや、あくまでも『触ってないような感じ』だ・・・。
 ・・・もしかしたら・・・」
メーザは3人の戦い方を冷静に分析したものの、結局ミッドバットが全員倒されるまでわからなかった。
「よいしょ・・・っと! 修行はここまでだなっ」
「「オス!!」」
トウキとセンイのかけ声の後、すぐに3人はパラドに問いかけた。
「なぁ、パラド・・・あの距離でどうやってその拳を当てたんだ?」
「あ、やっぱり殴ってるように見えたか? 実はオレ、一度も殴ってないんだ」
「・・・・・・へ?」
とりあえず魔物を退治したと言う事で、一同はマフィトゥへと向かう事にした。



「・・・ここがパラドの住んでいる所かぁ・・・」
「立派な道場だねっ!」
「そう言ってくれると有り難いんだけど、まだオレとトウキとセンイの練習所にしか使ってないんだよな」
確かに、他に人はいなさそうだ。
かなり綺麗で、人が沢山入っても問題無さそうなのに。
「あ、そうそう。さっきの質問・・・オレが一度も殴ってないって話の答えを教えてやるよ」
そう言って、倉庫から何やら藁で出来たカービィ型の練習人形を持って来た。
「よーく見とけよ・・・・・・はっっ!!」
5メートルほどの距離で、パラドが素早く手を前に突き出すと、


ボンッッ!!
「!!?」
その練習人形がことごとく破裂した。
プリスは驚いていたが、あとの2人は解ったらしい。
「なるほど・・・気の塊を飛ばしたんだな」
「気?」
まだわかっていないプリスに、パラドは「もう一度見ててくれよ」と言い、
先程とは違う別の練習人形を持って来た。
「今度はちょっとゆっくり飛ばしてみるぜ」
もう一度、今度は手を少し遅めに前へ突き出した。

「・・・見えた! 何か、球状の光るものが見えたよ!」
「そ、これが『気光波動(きこうはどう)』というもので、
 感情エネルギーや体力等を光の物質に変えて、飛ばす事が出来るんだ」
よく、「疲れが吹き飛ぶ」というが、大体それと同じ物であり、
パラドはその『吹き飛ぶ』エネルギーを技として使っている。
「だが、この波動は自身の腕力とかに関係しないから、
 実際使うには威力が足りねーんだ。
 ・・・だから、敵を攻撃するときに拳や足は一瞬だけ触れるけどな」
「ようするに、敵には極力触れないよう戦うのが基本なんだね?」
「ご名答っ。 一瞬のみ接触し、基本は気を放つ。これが『瞬触気法流』だ」
ミッドバットと戦う前、パラドの自己紹介の時に言ってた、『瞬触気放流』の意味が
3人とも今わかったようだ。

「近距離も遠距離も兼ね備える格闘家かぁ・・・・・・
 仲間になってくれると、結構戦力になるんじゃないかな」
プリスが、ウォールとメーザにそう問いかけると、パラドはその言葉にすぐ反応した。
「仲間? 戦力? そういや、お前ら何の旅をしているんだ?」
「あ・・・えっと、実は・・・」

とりあえず、3人が旅に出た理由をパラドに話した。
「なるほど・・・プリスのねーさんを取り返すことと、親父さんの仇を討つために、
 その『H・P』とやらを叩き潰しにいこうってことなんだな」
「で、オレ達は村を壊されたからな。3人で旅する事に決まったんだ」
パラドがその話を聞き、少し考えたそぶりを見せた。
そして、

「だから仲間とか戦力とか言ってたのか。
 ・・・おもしろそーじゃんっ、丁度修行の旅に出たいとこだったしな!」
3人はその言葉を聞いて、とても喜んだ。
戦力が1人増える事で、戦いやすくなるからだ。
「じゃあ、仲間になってくれるんだね?!」
「あ、けどよ、ちょいとタンマッ」
「え?」
パラドの発言に、ピタッと体が止まる。
「流石に今日会ったばかりで『仲間になってくれ』、
 それですぐ仲間になるっていうのもアレだなぁ・・・。
 ・・・こうしようかっ」
「???」
さっき、丁度修行の旅に出たいとこ とか言ってたのに、
何を言ってるのか訳が分からない。
そう思っていると、パラドの口からこんな発言が。
「あくまでも、修行の旅に出たいって言っただけだからな。
 付いて行くかどうかは、戦って決めよう」
「え、え、ええええ!!?」
「つまり、お前達3人でオレと戦って、お前達が勝ったら仲間になる。
 けどお前達が負けたら、オレは1人で旅に出るから。
 もしも弱いやつと一緒に旅をすることになったら、困るからなっ」
先程の『瞬触気放流』を見ていた3人にとって、
相手が1人とはいえ勝機があるのだろうか? と思ったが、
戦わなければ仲間に出来るチャンスも無いので、仕方なく勝負を受けることになった。


「うへぇ・・・何でこんな事になっちゃうのさ・・・」
「やるしか無いだろ・・・そういえば、武器はOKなのか?」
プリス達はそれぞれ杖や剣を持っているが、格闘家のパラドは素手である。
ウォールは、武器VS素手のバトルに少々疑問があったが、
「OKだっ。 オレは、相手が武器を持っていても戦う心は失わないからなっ!」
RPGは、パラドに勝てるのだろうか?







〜APPEAR WORD IN NEXT STORY〜

「メーザ!? い、今何が・・・!」
「そうだ、こうすればっっ・・・!」
「兄者っ! あとはおまかせを!」
「・・・あの目・・・まさか・・・」


〜TO BE CONTINUE......〜




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