何で、ボクを捨てたんだろう?
何で、ボクは家にいないんだろう?


何で、ボクの体はいつも寒いんだろう.........




いつも通り、朝に起きて、昼に色んなとこへ行って、夜に寝て。
お父さんとお母さんと、楽しい話を一杯して・・・・・・


・・・あれ?
・・・・・・楽・・・・・・しい・・・?




いつまでが、楽しかったんだっけ?




ある時から、急に異変が起きたんだった。
ボクは、いつも通り笑顔で話しかけた。


でも、
無視された。


何で?
どういうことなの?
どうして、返事をくれないの??


しつこく話しかけるボク、
このしつこさが、いけなかったのかな・・・




とうとうその時が来た。




『もう育てるのに疲れた』
『捨てましょう』





・・・・・・・・・ぇ


......... その当時は、意味が全く分からなかった。
余りにも突然の事だったし、
3年前は5歳だったから・・・。




その後はお父さんもお母さんも、
ただ何も言わずにボクの体を無理矢理ダンボールに押し込めた。
ジタバタと暴れるボクをよそに、ダンボールのフタは閉じられた。




・・・ダンボールの中が暗かったからかな・・・
いつの間にか目を閉じて、寝ていたんだ。


とりあえず、目を開けて周りをあちこち見てみる。




全く知らない場所。
どこかの、小さな公園の片隅っぽいらしいけど、
こんな所見た事も無い。


・・・その時のボクは、
飼い主に捨てられたペット同然だったって事なんだ・・・
無責任に捨てられ、誰かに拾われるのを待つ。
拾われなかったら、のたれ死ぬか、惨めに生きるしかない。


ダンボールの中は、自分の体温のおかげでちょっと熱がこもってて、
温かかったから、出る事が出来なかった。
もしここから出たら、幼いボク1人だけでは何も出来ないから、
危険だと思った。


・・・ボクは、捨て犬と同じように、
拾われるのを待つことを決心したのだ。




・・・・・・誰も通らない。
・・・きっと、この公園の事すら誰も知らないのかも。
・・・・・・じゃあ、このままボクは誰にも知られずに・・・




・・・あれから2日ほど経って、
雨が降り始めた。
ダンボールのフタをちゃんと閉めたけど、雨水がフタを濡らしながら
中まで染み通って来た。


・・・冷たい雨水が、ボクの体を冷やしていく。
体温がこもってて温かかったのに、寒い。




寒い。寒い。寒い。


寒い寒い寒い寒い寒い寒い。




今更かというくらい、涙が込み上げて来た。
こんな寒い中、1人で死ぬなんて嫌だ。
寒いよ、寒いよ・・・
寒いよぅ・・・・・・




フタはもはや意味が無かったから、
開けて外の様子を見てみる。
・・・雨は結構強くって、近くまでしか見えない。


・・・・・・雨水が地面に叩き付けられる音しか聞こえない。
自分の体に、雨水は強く降り注ぐ。
目の中に雨水が入ったのかな・・・・・・
それとも、泣いているのかな・・・・・・
目は微妙にかゆい感じがして、目の前の風景が歪んでる。




・・・ふと、何か別の音か何かが聞こえたような気がした。
・・・・・・声?


『あー・・・畜生っ、まさか帰りに雨が降るなんてっ!』
『公園があるし、雨宿りしましょうっ』
『・カ・ラ・ダ・ガ・サ・ビ・ツ・イ・テ・コ・マ・ル・』



その声は段々はっきりとして来て、こっちに近づいて来た。
・・・そっか、ボクのいる所の後ろ、土管が詰まれている。
雨宿りにはもってこいなんだ。


『・・・・・・ん??』




だから、ボクはあの人と出会ったんだ。
ほとんど偶然だけど。


......... 体温を奪われ意識が朦朧として、虚ろな目でボクは、
近寄って来た人を見つめる。


『・・・捨て子か』
『そのようで・・・』
『・ド・ウ・ス・ル・キ・ダ・?・』




『拾って、育ててやるよ』



その言葉を聞いて、急にボクは激しい睡魔に襲われた。
最後に・・・眠る前に聞こえた一言が・・・・・・


『オレの組織の、新たな仲間だ』






もう、捨てた親の顔なんて忘れてしまった。
だって、今のボクの家族は・・・




「トップのお兄ちゃんっ! お仕事お疲れさまっ!」
「クラップ・・・あんがとなっ、
 やる気が出て来たぜっ」
「リーダーッ、調査報告に戻ってきましたっ」
「エーボウトお兄ちゃんもお疲れさま!
 これからも、お仕事頑張ってっ!」
「オッケーッ、オレ頑張るよ、クラップッ!」
「・ク・ラ・プ・
 ・カ・ラ・ダ・サ・ム・ク・ナ・イ・カ・?・」
「アルバムお兄ちゃんっ、大丈夫だよっ。
 アルバムお兄ちゃんこそ、雨に気をつけてねっ?」
「・ア・ア・ワ・カ・タ・
 ・チャ・ン・ト・キ・ヲ・ツ・ケ・ル・」





少しでも、この人達に元気を分けてあげたい。
温もりを持ったコート、ちゃんと返って来る言葉と引き換えに。


例え、ボク達の今やっている事が間違っている事でも、
・・・恩返しをしたいから。




H・Pは・・・・・・本当に『凄い』って、思っているよっ。
・・・・・・何が凄いかって??

・・・凄いから、凄いのっっ!!!






============あとがき============
クラップの評価は、「凄い」かどうかで決まるらしいです。
でも、どこが凄いのかは・・・・・・本人だけが知るのみで。



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