生まれた頃から、俺は苦しかった。
すでに死にかけの状態だったんだな。
・・・なら、その時に放っておいてくれればよかったのだが。




・・・・・・結局俺は病院で、延命処置を受けるためにサイボーグになった。
頭脳速度はこの通りまともだが、喋る時は妙にカタコトだ。
おかげで、何かしら違和感を感じる。
・・・しばらくしてから他人には、俺は異端扱いをされた。
俺は、なりたくてなったわけじゃないのに。
だから物心ついた頃には、その病院を半壊して出て行った。




他人が食べている「肉」だの「野菜」だの、俺には関係ない話。
機械化された燃料入れの部分に、オイルを必要量流し込むだけで、俺は生きていける。
「甘い」「辛い」「酸っぱい」「苦い」「塩っぱい」「渋い」、
ましてや、「不味い」「美味い」だなんて、
俺には到底理解出来ない話。


・・・まあひょっとしたら、他人にとってオイルは変な味がするのだろうが。
「苦い」か「酸っぱい」か。
イメージだけどな。




・・・・・・ああ、だが、こんな機械まじりの重たい体は窮屈だ。
出来るなら・・・生身の体で生きたいよ。
それが出来ないって言うなら・・・・・・
あの、瀕死の状態で生まれた時に、
延命処置などせずに放っておいてそのまま殺してくれた方が、
今のような不自由な人生を暮らすような事は無かっただろうな。






「・・・よし、燃料補給出来たぜ。
 次の補給は1週間後のー・・・・・・」
「・ア・ア・ワ・カ・タ・・・・・・・・」





未だに俺は、生まれた頃の事を覚えているのか。
・・・だがそれでこそ、この組織での名前にはふさわしいのかも知れない。




「アルバート」改め、「アルバム」。




「・オ・マ・エ・モ・カ・コ・ノ・コ・ト・
 ・オ・モ・イ・ダ・シ・タ・イ・カ・?・
 ・・・・・・・ミ・セ・テ・ヤ・ロ・ウ・
 ・・・・・・・・・コ・ノ・オ・レ・ノ・
 ・ツ・メ・デ・ナ・ァ・・・・・・・・」







走馬灯と言う名のアルバムを、見せてやるよ。






============あとがき============
自分の体に不満を持ってるアルバム。
けれど、サイボーグの体でなければ生きていく事も出来ない。

まさに、アルバムにとって最大の無い物ねだりなのかもしれません。



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