昔から、陰口を叩かれていた。
なんて言ってるのかは分からなかったけど、
大体の見当はついていた。
けど・・・やっぱりなんて言われているのか、それが気になった。




そこで、物心ついた時にある物を作ってみた。
工作とか製造関係は興味を持っていたから。


かすかな声や、相手の脳波を電気信号に変えて聞く事が出来る、
『テレパスヘルメット』。
これを被って、いつも陰口を叩いてる人達の声を物陰から拾う。
・・・すでに私も、陰からコソコソ何かをやっている時点で、彼らの仲間だろうか。
だが、そんなことで気にしていては折角作ったヘルメットが可哀想だ。
改めて、拾った声を聞いてみる。




『アイツさぁ、いっつもご機嫌斜めっぽいよな』
『顔が怒ってそうで怖いんだよね』
『こんな事、アイツの前で言ったらどーなるやら』
『よせよ怖いだろ、あんな不機嫌女』





別に怒ってるわけじゃないわ。
ただ、表情を変えるのが下手なだけよ。
・・・もっとも、もし怒ってるのだとしたら
心当たりはあるわ。
すぐ目の前に。
あなた達よ。




.........今日も陰口を叩かれてばかりだ。
けど、もう飽きるほどおんなじセリフだったから、結局慣れてしまった。
・・・そう思ってたある日、新しい陰口を拾った。




『あいつ、笑わないよなぁ』
だって、面白可笑しい事が起こったわけじゃないし。


『あの人さ・・・泣かないよね』
だって、心を打たれるような話を聞いたわけじゃないし。


『あの子・・・顔、怖いよね』
だって、これは元からであって、怒ってるわけじゃないし。


『アイツ喋らないよね』
だって、あなた達とそんなに仲がいいわけじゃないし。


『面白くないよな、あそこにいる奴』
だって、


そんな陰口ばかり言われているからだし・・・・・・。




内容がわかって、
ああ、どうでもいいや と思った心と、
知らなければよかった と思った心が交わる。


正面から話して来る人なんて、いない.........
そう思っていた。




ある日、このテレパスヘルメットの能力を買われ、
大きな組織に入団することになった。
私の仕事内容は、情報伝達。
なるほど・・・テレパシーを利用すれば、第3者に情報が漏れる事が無い。
同じ組織の仲間から仲間に内容を伝えるだけ。
・・・・・・特に、そこの仲間達とも顔を合わせて喋る事は少なかった。


陰口を叩かれる事は無くなったけど、
何かが足りない。
そして、何かが違う。
・・・一体、何なのだろうか・・・・・・






「よっ、どーしたのっ?
 物陰で1人、そんなに考え込んじゃってっ☆」



2年前、そいつはやってきた。
情報伝達は、私1人の専売特許のはずだったのに。
1人じゃ間にあわないだろうからと、リーダーが決めた事だったのだ。


そいつは、他の人達と大違いだった。
陰口なんて絶対に言わない。
私には、絶対に顔を合わせて全部喋る。
でも、最初のうちは・・・ちょっと五月蝿いから、無視していた。
普段からあんな毎日だったから、会話が苦手になっていたのだ。




・・・しばらくした、ある日の事。
毎日のように、あいつは私に話しかけてくる。
・・・私に話しかけても、面白くないはずなのに。


「なー、一体いつも何考え込んでるのさーっ?」
「・・・何でもないわよっ・・・」
「ふ〜〜〜ん??」
「・・・な、何よっ」



・・・・・・次の一言が、そんな私の全てを変えた。




「・・・・・・ツンデレラだなっ☆」
「!!?? ・・・だ・・・だ・・・っ!!







誰が ツンデレラ よっっっ!!!!!!






・・・・・・内心、自分でも驚いた。
あんなに大声を出して怒ったなんて、今まで無かったから。
・・・じゃあ、今、私は・・・『本気で怒った』の・・・?
顔は、普段から怒り顔っぽかったけど、本気で怒った事なんて無かったのに。





「・・・おーおー」
「・・・ぇ・・・っ?」

いきなり大声をあげて怒った私に、
ちょっと驚いていたらしいものの、あまり怖がってないあいつは、
意外な一言を言ったのだ。


「照れ顔、可愛いぜっ☆
 ほっぺたが真っ赤っ」


「!!!!????」





ウソ.........
照れ顔.........?
怒り顔じゃなくって.........?
そんな顔、今、私、してるの?




「ケケケッ、慌ててる慌ててるーっ☆
 そんなツンデレラにオレ、首っ丈だわっ」
「う・・・五月蝿いわねっ・・・!
 ツンデレラって言うな・・・っっ!!」

「えー、でも普段から本気で怒ってるわけじゃないんだろ?
 そーいう照れ顔も見せてくれたっていいじゃんっ☆」




不思議な感じだ。
こいつは、どんな言葉も陰口にせず、私にはっきりと聞こえるトーンで喋る。
・・・・・・初対面に対して、ツンデレラだとか、ほっぺたが真っ赤だとか、
失礼な奴・・・・・・
・・・でも・・・・・・




「・・・ありがと・・・」
「んー?」





もうこの時から、私は『彼』の虜になってたわけだ。




それよりも今の私、絶対口が笑ってると思う。
いくら何でもそんな顔見られたら・・・・・・
・・・・・・恥ずかしい・・・
・・・・・・な、何か言って誤摩化さなくっちゃ・・・!


「べ・・・別に、
 『嬉しい』から言った、ってわけじゃないんだからねっ・・・!!」
「はいはい、そう言う事にしておくよっ☆」
「本当にそう思ったのかしら・・・?」
「『麗しきツンデレラ』だって事はよーくわかったからっ、
 ケッケッケーッ☆」
「わぁかってなぁぁーーいっっっ!!!!!!!!」



・・・ムカツクけど、悔しいけど、
・・・『感情の変化』と、『嬉しさ』を初めて教えてくれたのは、






アンタよ・・・ビーツェスッ・・・・・・。






============あとがき============
チャットは当初、クールキャラで行くつもりでした。
・・・が、ビーツェスが見事にクールな空気を溶かしちゃいました(ぁ
現実にいたら絶対大変だけど、これはこれで可愛いよチャット(殴

自分で書いてて2828したのは内緒です(内緒になってない



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